海洋科学博物館でシンポジウム「やっぱり水族館は面白い~裏話を集めました~」を開催しました

海洋科学博物館で11月16日に、海のはくぶつかんシンポジウム「やっぱり水族館は面白い~裏話を集めました~」を開催しました。海洋学部の教員や当館学芸員が取り組んでいる駿河湾における海洋生物の生態研究などについて紹介しようと開いている企画で、今回は初めて海洋水槽の横に会場を設営。水族館ファンや海洋学部生、一般市民ら48名が参加し、9名の学芸員がそれぞれの専門分野を生かしたテーマで講演しました。

鈴木宏易学芸員は「水族館を支えている漁師さんとの繋がり」をテーマに、潜水調査や深海生物などの採集・調査、キンメダイを展示するために根気強く手伝ってくれた漁師とのかかわりなどを紹介。長谷部阿由美学芸員は「博物館での視覚障がい者教育の試み」として、当館の触れる展示や体験型学習プログラムを紹介するとともに、3Dプリンターによる生物模型の可能性などを語りました。冨山晋一学芸員は「解き明かしたい素朴な疑問-駿河湾に魚は何種いるか?-」と題し、1970年の開館から続けてきた標本の採集・保存には学芸員だけでなく多くの海洋学部生の協力もあったと説明し、50年前に動物学者黒田長禮博士が製作した目録1016種に数百種類を追加した『新・駿河湾魚類目録』の完成が間近であることも紹介しました。

また、太田勇太学芸員は「博物館のアウトリーチ活動」として出前授業やキャリア教育について説明し、山田一幸学芸員は「飼育担当のスマホのぞいちゃう!?~ラブカ担当Yの場合~」をテーマに、サメの一種であるラブカの写真を見せて生体について解説。「水族館の展示は面白い、そして難しい」と題した野口文隆学芸員は、展示づくりのポイントや展示改修前後の変化を説明し、「展示は分かりやすく伝えるのが一番大切ですが、担当する学芸員の思いや知識が入るとより面白くなります」と語りました。犬木義文学芸員は種の保護や生物学研究への貢献に欠かせない「海水魚の繁殖と卒業研究 ~マツカサウオを例に~」について、手塚覚夫学芸員は「アカボウクジラの骨格標本を作る」をテーマに、2020年に公開した標本の製作過程を説明。青木聡史学芸員は「水族館の資格と技術-水族館学芸員の資格取得奮闘記-」として、潜水士や普通自動車免許、フォークリフト運転資格、電気工事士など自身が取得した多彩な資格について、学芸員の仕事を絡めて紹介しました。

最後に村山司館長(海洋学部教授)が、「学会以外で水族館を支えるスタッフの話を聞く機会はなかなかなく、今回はこうした企画をやりたいというスタッフの思いを形にしました。当館は、本館の一般公開を10月31日で終了しましたが、今後も形を変えて他の水族館ではできない企画を考えていきたい」と語りました。その後は学芸員によるガイドツアーも実施。愛知県から参加した夫婦は、「海洋学部卒業生の息子が学芸員資格取得時にこの博物館で実習をしていて、私たちにとっても思い出深い施設を再び訪れ、学芸員の皆さんがさまざまな熱い思いを込めて維持・管理してきたのだと改めて知ることができました。どのお話も切り口が新鮮で、展示を見る目が変わる内容ばかりでした」と感想を話していました。