海洋研究所の平所長が日本学士院の会員に選出されました

海洋研究所の平朝彦所長がこのほど、日本学士院の会員に選出されました。日本学士院は、学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関として文部科学省に設置されており、学術の発展に寄与するため必要な事業を行うことを目的としています。1879年に福沢諭吉が初代会長を務め創設された「東京学士会院」を前身としており、学術的な業績をもとに選定された定員150名の会員により組織されています。

地質学を専門とする平所長は、日本列島の基盤を構成する地層群を精査し、古生代から新生代にかけて最大数千km離れた海洋地域で生じた種々の地層や岩石が日本列島まで運ばれ付加され、それによって日本列島が成長し形成されたことを明らかにしました。この発見によって、従来唱えられていた「地向斜」に基づく日本列島形成論を覆し、海洋プレートの移動と沈み込みに起因する付加作用が日本列島形成の基本過程であることを示しました。2007年には、この研究成果をまとめた「プレート沈み込み帯の付加作用による日本列島形成過程の研究」で日本学士院賞を受賞しました。その間、海洋研究開発機構(JAMSTEC)による地球深部探査船「ちきゅう」の建造・運用計画にも参画し、統合国際深海掘削計画などを推進。JAMSTEC理事長や日本地質学会会長などを歴任し、20年度から本学海洋研究所の所長に就任しました。23年には瑞宝中綬章を受章し、現在は地質学の新たな時代区分「人新世」についての研究を展開。人類の活動が地球の生態系や気候に大きな影響を及ぼすようになったのかについて探求しています。

平所長は、「大変光栄に思うと同時に、身が引き締まります。私たちの使命は日本、世界の学術研究をリードし、その成果を若手研究者に引き継ぐこと。日本学士院には著名な先生がたが数多く在籍されているので、研究交流を通してさらなる成果を創出していきたい」と語りました。