卒業生の丹佑之さんがマックス・プランク研究所(ドイツ)で博士号を取得しました

海洋学部卒業生の丹佑之(たん・ひろゆき)さんがこのほど、ドイツのマックス・プランク研究所からバイオ・オプテックスに関する研究により博士号(Ph. D)を授与されました。同研究所はアルベルト・アインシュタインが所長を務めたことでも知られ、多くのノーベル賞受賞者も輩出しており、「マックス・プラ ンク研究所で何が研究されているかを知れば、ドイツの科学技術の未来が見える」といわれるなど、ドイツを代表する最重要学術研究機関とされています。

丹さんは東海大学付属第五高等学校を卒業後、海洋学部海洋工学科(当時)に進学。2004年度に大学院海洋学研究科海洋工学専攻修士課程を修了しました。 修士課程1年次生のときに、世界のバイオ・オプテックス分野の研究者たちが約半世紀にわたり挑み続けてきた植物プランクトンの種類によって波長特性が異な る現象を解明。指導教員であった海洋学研究科の大石友彦教授とともに国際学会で発表しました。この研究成果の重要性をいち早く評価したマックス・プランク 研究所が丹さんの研究者としての将来性に着目。丹さんは同研究所からの招請を受けてドイツにわたり、光合成を含めた植物プランクトンの光に対する特性な ど、本学での研究をさらに深化させてきました。

丹さんの博士論文は、これまで非常に測定が困難とされてきた植物プランクトンに当たった光が四方八方に拡散する現象(光散乱)を、瞬時に測定する方法のを 開発し、植物プランクトンの種類によって光散乱の状態が異なることを示しました。植物プランクトンは光合成を通じて地球温暖化の要因となる大気中の二酸化 炭素を海洋表層に取り込んでおり、その量は草木など陸生植物すべての吸収量にほぼ匹敵します。丹さんの研究成果により、”人工衛星などから海洋にどのよう な種類の植物プランクトンが分布しているか”をより詳細に把握できるようになることで、地球温暖化の将来予測や、海洋における食物連鎖への深い理解に寄与 することが期待されています。

大石教授は、「丹さんの博士論文は、ここ10年間のバイオ・オプティクスに関する論文の中で世界的に見ても特筆すべき研究成果です。すでに、彼が開発した 測定原理を詳細に解説した論文が欧米の研究者によって学術雑誌に紹介されています。また、同研究所には彼が開発した装置を用いた共同研究の申し込みが欧米 各国からきているとの連絡が入っています。地球温暖化への対策が急務とされる今、若手研究者として丹さんへの期待は大きく、世界の研究者が彼のさらなる研 究成果に注目しています」と話しています。

※バイオ・オプテックス:光合成を含めた植物プランクトンの光に対する特性を中心に研究する分野の総称

卒業生の丹佑之さんがマックス・プランク研究所(ドイツ)で博士号を取得しました