海洋学部の教員が岩手県大船渡市で開催されたシンポジウム「東北日本の海は今」で講演しました

海洋学部の教員が7月4日、岩手県大船渡市の公共施設「シーパル大船渡」で開かれたシンポジウム「東北日本の海は今」で講演しました。本学部では、文部科学省が公募し国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が採択されている「東北マリンサイエンス拠点形成事業」に再委託機関として参画しています。この事業では、東北沿岸域からその沖合における海洋性体験の調査研究に取り組んでおり、今回の催しは、同事業と、岩手県、大船渡市、JAMSTEC、東海大学の共催で実施したもの。これまでの同事業における研究成果を地域の皆さまに発信することを目的に、研究者による講演と合わせて、地域の子どもたちに海に関する体験型の実験や深海生物の魅力を楽しんでもらう展示を行いました。

当日は市民や行政関係者ら約50名が参加。講演には本学部海洋地球科学科の坂本泉准教授と北里大学講師の山田雄一郎氏、JAMSTEC上席研究員の藤倉克則氏、本学海洋研究所地震予知研究センター長の長尾年恭教授が登壇しました。坂本准教授は「三陸沿岸における3.11津波被害調査報告―大船渡・広田の海底はどうなった?」と題し、音波による海底地形・地質調査の状況を紹介。津波によって海に流されたガレキの分布状況や種類の解析・底質変化の解析を通じて、水産物への影響や過去の津波における被害との関連についての分析について解説し、「海底にはまだまだがれきが残っている。また、海底の底質も刻々と変化しており、継続して海底の様子を調査していく」とまとめました。また、長尾教授は「3.11 地震と地震予知の現状」をテーマに、長年取り組んできた地震予知に関する研究の最新状況について講演。地震予知の可能性をはじめ、地震活動を可視化し、地下の状況について調べた「地下天気図」について紹介し、「地震を予知する研究自体は進み、その精度も向上しています。災害を減らすための最後の砦が“予知”。防災に向けて啓発活動に取り組んでいく」と語りました。

講演後には質疑応答の時間も設けられ、来場者からは震災後新たに建設が進んでいる防潮堤が海洋に与える影響や、地震予知活用の現状と行政の対応などについて質問が寄せられました。最後のあいさつで坂本准教授は、「東北マリンサイエンス拠点形成事業では、12年度から毎年延べ200名の学生たちと東北を訪れ、研究に臨んできました。地道な調査の結果、ようやく環境の変化がつかめてきたところです。今後も復興と各湾内の環境変化を把握するよう、JAMSTECとともに取り組んでいきます」と抱負を述べました。また、会場では本学部が深海の水圧を体験できる実験装置や坂本准教授の研究室で取り組んでいる熱水鉱床やマンガン団塊など海底の鉱物資源の実物などを展示。本学部の学生が説明役を務める中、大船渡市の中学生らも多数来場し、熱心に見学していました。

講演の内容は以下の通りです。
「三陸沿岸における3.11津波被害調査報告―大船渡・広田の海底はどうなった?」 海洋学部海洋地球科学科 坂本泉准教授
「大船渡湾の水質は震災前後でどのように変化したか?」 北里大学海洋生命科学部 山田雄一郎講師
「3.11巨大地震は深海生物に何をしたのか」 JAMSTEC 藤倉克則上席研究員
「3.11 地震と地震予知の現状」 海洋研究所地震予知研究センター 長尾年恭センター長・教授

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