防災セミナー「熊本地震・東北地方太平洋沖地震から学ぶ」を開催しました

海洋学部と東海大学海洋研究所では9月4日に静岡市東部勤労者福祉センター「清水テルサ」で、防災セミナー「熊本地震・東北地方太平洋沖地震から学ぶ」を開催しました。このセミナーは、地震・津波災害などの専門家による研究発表や災害に強い社会を構築する方法を討論する場として、「防災の日」に合わせて3年前から開催しているものです。当日は市民約50名が参加し、熱心に聴講しました。

第1部ではまず、静岡県の防災行政に長年携わってきた静岡大学防災総合センターの岩田孝仁教授が、「減災から防災社会へ」と題して講演しました。岩田教授は、「災害が起きた際の被害を想像する力が弱くなった結果、『想定外』の事態が起きており、『減災』という言葉が強調されるあまり被害をゼロにする努力をしなくてもよいという考えが生まれているのではないか」と問題提起。阪神淡路大震災や東日本大震災の事例を挙げながら、災害が起きる前に公的資金を投入して木造家屋の耐震化や津波防災を進める「事前復興」の発想をもち、防災教育を高めることが重要だと指摘しました。続いて、海洋研究所の長尾年恭所長が、「熊本地震の意味-日本列島の地震活動は今後どうなるのか-」のテーマで講演。これまでの研究成果をもとに、熊本地震のメカニズムや特徴、今後起き得る地震の可能性を解説しました。また、東海大学チャレンジセンターの木村英樹センター長が、4月16日の平成28年熊本地震発生直後に災害物資輸送チームの隊長として現地に入った際の経験をもとに、現地で必要となる物資や今後の災害に向けて整えておくべき支援体制について語りました。

第2部では、田中博通教授(海洋学部環境社会学科)と株式会社レオパレス21の塩屋正宏氏(学校法人営業部営業副部長)、原田靖講師(海洋学部海洋地球科学科)が「巨大地震に備えた避難対策と賃貸アパートを活用した情報発信」と題して講演しました。田中教授は、実験データを使いながら津波の力が構造物に最も強く作用するのは物体に当たった瞬間であることを説明。その上で、「地震に対しては警報の周知徹底と耐震構造の強化が必要であり、津波に対しては建物の基礎には杭を打ち込み、日ごろの避難訓練などを通して避難場所や経路への認識を高めておくことがよりいっそう必要である」と語りました。一方塩屋氏は、7月30日に海洋学部の学生と合同で実施した清水キャンパス近隣の賃貸物件の調査結果を発表。これにより、室内ではストッパーなどの活用によって家具を固定し、非常持ち出し袋を常備することで防災対策につながることや、調査時点では各物件の海抜データや避難経路が確認できない物件が多いといった課題が明らかになったことを紹介。その対策として、同社のホームページと管理する物件に据えつけられている掲示板に、1、2階の海抜を記した表示板と避難経路を掲示したと説明しました。原田講師は、同学科の学生を対象に行った「防災意識調査アンケート」の結果を紹介。「地震が発生する危険性が高いという意識はあるものの、安全性よりも家賃の安さといった経済性を優先して物件を選ぶ傾向にあり、賃貸住宅では“床や壁に穴をあけられない”という理由で防災対策をしていない学生が多く見られる」と注意を喚起しました。

最後には、東日本大震災の記憶の継承と地域の防災力向上につながるイベントを実施している「防災フェスタ実行委員会」の影沢孝行氏が登壇。「防災フェスタinしみず」や防災講座などの活動とその成果を紹介しました。参加者からは、「講師の先生方の話はどれも素晴らしく、もっと多くの人に聞いてほしいと感じました」、「地震のメカニズムから東海大学の支援活動など多岐にわたる内容でとても勉強になりました。自分が所属している企業で災害対策を考える上でもとても参考になりました」といった感想が聞かれました。

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