医学部付属病院が「認知症とテクノロジー」をテーマに研修会を開催しました

医学部付属病院では2月27日に伊勢原キャンパスで、「2017年度認知症研修会」を開催しました。認知症への理解を深めてもらおうと、本病院の認知症疾患医療センターが中心となって実施しているものです。今回は、「『認知症とテクノロジー』について」をテーマに、大学の研究者や企業の代表者4名が講演。学生や教職員をはじめ近隣の住民や医療従事者、地方公共団体の福祉担当者ら多数が参加しました。

前半は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室専任講師の岸本泰士郎氏が、「精神疾患・認知症診断におけるテクノロジー利活用の課題と展望」と題して基調講演。情報通信技術(IT)と人工知能(AI)の精神医療領域へ活用事例や研究成果について説明しました。岸本氏は、ウェブ会議システムを用いて医療者が受診者を診断・治療する「遠隔診療」の有用性を明らかにした自身の研究結果を紹介し、「遠隔診療は、へき地医療や復興支援、在宅支援、引きこもりなどについても適応の可能性がある」と語りました。また、AIを活用した、うつ病や認知症、精神疾患の重症度の評価や統合失調症のハイリスク者の推定に関する研究についても解説し、「医療分野へのAIの活用が期待される中、個人情報の保護や診断ミスがあった場合の責任の所在などといった倫理的、法的、社会的な課題について議論していかなければならない」と指摘しました。

後半は、株式会社Z-Works代表取締役の小川誠氏が、「IoTセンサー活用での生活リズム変動検知による認知症への取り組み」と題して講演。介護施設などで、ベッド上の入所者の心拍数や呼吸数、離床状況を把握するセンサーや、高齢者宅と遠隔地に住む家族を3G通信でつなぎ、高齢者の介護予防や自立支援に役立てるシステムについて紹介しました。トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社代表取締役の中西敦士氏は、「排泄予知デバイスDFreeの紹介と認知症患者へのDFreeを使った排泄ケア事例について」をテーマに、要介護者の腹部に装着して膀胱の状態をセンシングすることで排尿のタイミングを知らせる器具「DFree」の機能や効果について説明。また、「ロボットを活用したリハビリ型デイサービスの成果報告」と題して講演した株式会社インシーク代表取締役の竹内洋司氏は、リハビリ型デイサービスにコミュニケーションロボット「パルロ」を導入した際に、利用者の身体状況や認知機能、主観的QOLが向上するといった調査結果を紹介しました。

参加者からは、「医療分野でITやAIがどのように活用されているかを具体的に知ることができてよかった」「要介護者と介護者、患者さんや家族がより快適に過ごすために、ITやAIの活用は有用だと感じました。積極的に情報を収集し、エビデンスや安全性を確認した上で取り入れていきたい」といった感想が聞かれました。

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