「文化財を科学する―アンデス土器の構造解析に関する研究会―」を開催しました

文明研究所とマイクロ・ナノ研究開発センターでは8月2日に湘南キャンパスで、「文化財を科学する―アンデス土器の構造解析に関する研究会―」を開催しました。両研究所では2017年から、本学が所有する南米文化に関する国内最大級の規模を誇るアンデスコレクションを高度な光学機器を使って分析し、製造方法や用途の解明を目指す研究を進めています。今回の研究会は、これまでの成果を学内外の研究者らと共有し、研究の進展につなげることが目的で、約50名が参加しました。

開会にあたっては、文明研究所の山本和重所長が、「この研究プロジェクトは、総合大学である本学の特徴を生かせる活動であり、学部生も参加するなど広がりを見せています。この研究会が今後の研究の発展に大いに資することを期待しています」とあいさつしました。続いて、文化社会学部アジア学科の山花京子准教授が、文明研究所のコアプロジェクト「東海大学所蔵古代エジプト及び中近東コレクション(AENET)の公開に向けての基盤整備」として、文化財の修復保存を進めるために、東海大学イメージング研究センターのX線CTスキャナを使って土器のスキャニングを進める一方、遺物の画像データをもとに土製楽器のレプリカを作り、吹奏楽研究会の協力を得て演奏実験を行うなど、これまでの活動成果を説明しました。

その後、これまで研究に参加してきた岩井雄一朗さん(工学部材料科学科4年次生)や小能治子さん(文学部アジア文明学科4年次生)、福岡優斗さん・大内信之介さん(理学部物理学科4年次生)が、CTスキャナを使って土器の構造を分析した成果や土製楽器(笛吹土器)に音を出す仕組みとして取り入れられている笛玉の構造や機能に関する研究、スキャンデータをもとに楽器の音をシミュレーションする技術の研究成果を発表しました。

また、アンデス文明の研究を手掛けている鶴見英成氏(東京大学総合研究博物館助教)と森下矢須之氏(BIZEN中南米美術館館長)、真世土マウ氏(岡山県立大学准教授)が講演。鐙型土器の用途や製法、時代による変遷や笛吹土器の特徴などを説明したほか、3つの研究機関が連携して進めている土器の製法解明を目指す研究を紹介しました。

企画運営を担当した山花准教授は、「アンデス文明について、これまで私たちが知らなかった成果を多く学ぶことができ、研究プロジェクトをさらに進めるうえで有意義な研究会となりました。今後もこうした研究会を定期的に開き、東京大学やBIZEN中南米美術館などとも連携を深め、本学のアンデスコレクションのさらなる有効活用につなげていきたい」と話しています。

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