海洋学部が市民講座「静岡市環境大学2022」の運営に協力しました

海洋学部の教員が、静岡市が開講する市民講座「静岡市環境大学2022」の運営に協力しています。9月3日には静岡キャンパスで講義と観察実験を実施し、水産学科の秋山信彦教授と松浦弘行准教授、石井洋准教授が講師を務めました。静岡市環境大学は、環境全般の専門的な知識を修得し、身の回りの環境問題の解決に向かって主体的に取り組む人材育成を目的に静岡市が実施する「静岡シチズンカレッジ こ・こ・に」の専門課程の一つとして行われています。

約20名の受講生が参加した当日は、初めに秋山教授が「海面の生産性と供給サービスの持続的利用」と題して講義。生態系や「食う・食われる」の関係などについて説明した後、海域によって異なる生産性に触れ、「北の海は、海面近くが冷却されることで表層水が沈降し、栄養の豊富な深海の海水が太陽光の届く水深まで上がってくることで、光合成によってプランクトンが大量に繁殖しやすい生産性の高い環境となります。一方、南の海は大半が貧栄養な海水ですが、水温が高いために再生産が早く、種分化が起こりやすいために、種の多様性が高くなりますが一つ一つの種の個体数は少ないのが特徴です」と話しました。また、水産資源は鉱物資源と違って再生産するという特徴について触れ、「適正漁獲量の範囲であれば、漁業は環境を破壊しない生産方法です。多様な餌料環境、繁殖環境、生活環境によって海洋生物の種の多様性が維持できます」と話しました。

その後は、石井准教授と松浦准教授が「水圏環境と小さな生物たちの重要性」と題して講義。石井准教授は「水の循環と微生物」をテーマに、微生物を利用した生活排水の生物学的処理方法や汚泥の状態によって異なる微生物の種類について説明。続いて、清水南部浄化センターから提供された活性汚泥を生物顕微鏡に移して、繊毛虫ツリガネムシや有殻アメーバなどを観察しました。

さらに、松浦准教授がプランクトン(浮遊生物)の特徴や種類、採取方法などについて解説し、「プランクトンと聞くと多くの人が、小さい生物のイメージがあると思いますが、水中に漂っている生き物たちの総称です。種類も形もさまざまで、直径1mほどのエチゼンクラゲもプランクトンの仲間です。また、魚やカニなどは子どものときはプランクトンとして過ごし、成長して大きくなると形が変化してプランクトンではなくなります」と説明しました。続いて、松浦准教授が事前にキャンパスの臨海実験場近くの海で採取してきたプランクトンを双眼実体顕微鏡で観察。受講生は顕微鏡のレンズにスマートフォンを近づけて撮影し、種類を確認しました。受講生からは、「普段の生活では見ることのない小さな生き物を観察できて貴重な経験になった」「水族館で泳ぐ、大人になったヒラメの印象しかなかったので、仔魚の小ささに驚きました」といった感想が聞かれました。