人文学部の斉藤教授が「日本温泉科学会第75回大会」で大会委員長を務めました

人文学部人文学科の斉藤雅樹教授が9月7日から10日まで、大分県豊後高田市で開かれた「日本温泉科学会第75回大会」で大会委員長を務め、公開講演やパネルディスカッションに登壇しました。斉藤教授は、温泉・海洋療法による地域振興や水浴事故抑止のためのIoT研究に取り組んでおり、同科学会代議員や日本温泉地域学会の常務理事などを務めています。期間中は、全国各地の温泉の専門家や研究者ら約100名が参加しました。

初日の公開講演では「豊後高田の温泉振興とパーフェクトビーチ構想」と題し、2013年から企画・監修などに取り組んできた豊後高田市・長崎鼻海水浴場における温泉地振興のプロジェクトを紹介しました。斉藤教授は、別府や由布院といった周辺の有名温泉地に隠れがちな豊後高田市の振興に役立てようと、海水浴場に訪れる市民や観光客をターゲットに、清潔感・安全性・快適性を重視した施設やサービスを考案。研究室に所属する学生たちによるフィールドワークの様子も紹介しました。同日には「デジタル技術でひらく温泉の未来」をテーマとしたパネルディスカッションにも登壇し、司会進行役を担当。企業経営者やデジタルサービス企業の技術者、大分県職員ら6名が温泉とデジタルを掛け合わせた新たな施策について活発に議論し、「日々濃度が変化している温泉の成分をリアルタイムで計測・確認できる」「利用者の口コミをもとに毎日入れ替わる人気の温泉ランキング」など、デジタル技術を温泉地振興に役立てる新たなアイデアが語られました。

また、2日目の一般講演では「別府温泉を利用したカラーアルマイト商品の開発」と題して、株式会社長尾製作所と共同研究に取り組んでいる技術について紹介しました。同社では、表面加工技術のアルマイト加工(陽極酸化処理)時にできる微細な孔に染料を染み込ませる「カラーアルマイト技術」によって金属の藍染め技術を開発。共同研究ではこの技術を応用して酸の強い温泉で表面を腐食させるカラーアルマイトの開発に取り組んだ結果、角度により淡い青やピンク色に見える不思議な風合いの素材を完成させました。試作品は今年4月に新設した清水校舎8号館4階の交流スペース「PLAT」の看板に活用され、また「別府八湯温泉道」入湯パスポートなど温泉地の記念品向け用途などが提案されています。

斉藤教授は、「温泉は昔から全国で多くの人に利用されていますが、工業利用やデジタル活用の事例は少なく大きな可能性を秘めています。企業や自治体とともに新しいものを生み出し、社会実装できたらこんなに幸せなことはありません。一緒に研究している学生たちにも多様な経験を通じてアイデアを生み出し、未来を切り拓いてほしい」と語っています。