「文化財の三次元計測ワークショップ スマホとPCで文化財の3Dモデルを構築」を開催しました

文明研究所とマイクロ・ナノ研究開発センターでは12月10日に、湘南校舎19号館で「文化財の三次元計測ワークショップ スマホとPCで文化財の3Dモデルを構築」を開催しました。近年、その有効性が注目されている文化財の3D計測について、スマートフォンのアプリやカメラとパソコンを使った方法をみにつけてもらおうと企画したものです。文化社会学部非常勤講師で、考古形態測定学研究会代表、金沢大学客員研究員の野口淳氏が講師を務めました。

当日は文化社会学部アジア学科の学生や考古学研究者を志す他大学の大学院生、本学職員や一般参加の市民らを含め約20名が受講。まず野口氏が文化財を3Dで計測しデジタルデータを作成する際のポイントを語り、「これまでの文化財を扱う研究では、基本的には写真や絵など2Dで記録されてきました。2Dと3Dを比較すると、2Dでは『奥行き』の情報量はありませんが、3Dにして一つ視点が増えると情報量が増加するため処理に時間がかかっていました。しかし近年、パソコンやスマートフォンの値段が下がり、性能も向上してきたことで処理が容易になってきました。写真や絵は腕前が問われますが、デジタルデータでの処理は誰が計測しても同じ結果になり、客観性が保証されます」と解説しました。続いて、デジタルデータ活用のメリットや、レーザーや写真計測を用いた計測手法を紹介。さらに今回のワークショップで使用した、デジタル画像の写真測量処理と3D空間データ生成ソフト「Agisoft Metashape」について基本的な操作方法を解説しました。

後半は、東海大学所蔵の古代エジプト及び中近東コレクション(AENET)※を用いて実際に計測に挑戦。参加者はAENETを管理するアジア学科の山花京子教授による解説を聞きながら、「キプロス型土器」や紀元前1200年ごろにエジプトを治めたラムセス2世の時代に使われた石製錘、石斧などの遺物を手に取りながら写真に収め、野口氏からアドバイスを受けつつパソコンに取り込んで3Dデータ化していきました。参加した学生からは、「自分で撮った写真が簡単な操作だけでパソコン上で立体のように見えて、しかも360°回転できるのにはびっくりしました。自分は文系なので、今までデジタルの世界とはあまり縁がないと思っていたけれど、デジタルの世界は自分のすぐ隣にあるのだということが実感できました」という声が上がりました。さらに、一般参加の方からは「一日があっという間だった。聞いたことすべてが勉強になったし、自分自身で成果が出せたことでさらに興味が深まりました。」というコメントが寄せられました。

次回のステップアップ講座は来年度の開催を予定しています。

※AENETの詳細は下記URLからご参照ください
https://egypt.civilization.u-tokai.ac.jp/