総合科学技術研究所の橋田教授による共同研究成果がオンライン科学誌『Scientific Reports』に掲載されました

総合科学技術研究所の橋田昌樹教授がこのほど、レーザー加工による表面形状変化のメカニズム解明につながる微細周期構造特性に関する測定結果を発表。その成果をまとめた論文「近赤外及び中赤外のフェムト秒レーザー誘起微細構造物の結晶性」がオンラインの科学雑誌『Scientific Reports』に12月5日付で掲載されました。

半導体や太陽電池をはじめ、さまざまな最新技術の製造開発には微細な加工を施すレーザー技術が不可欠です。ごくわずかな時間だけレーザーを当て、その照射痕に生じる微細構造物を制御することで、材料表面に新たな機能を付与する新技術の開発が進められる一方で、そのメカニズムや詳しい制御方法には未解明な部分も多くあります。橋田教授はその謎を解明しようと、2018年から国立研究開発法人科学技術振興機構による「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q‐LEAP):次世代レーザー領域基礎基盤研究『先端ビームによる微細構造物形成過程解明のためのオペランド計測』」の採択を受け、名古屋工業大学や大阪大学、京都大学、日本原子力研究開発機構、量子科学技術研究開発機構などの研究者らと連携して研究を展開してきました。この研究チームでは、レーザーをフェムト(1×10-15)秒という超短時間間隔で材料に照射した際の微細周期構造について高時空間分解の計測や結晶性を分析。結晶性分析では、波長800㎚レーザーの場合は安定した結晶性を持ちながら残留したひずみが見られる一方で、波長11.4㎛のレーザーで作成した微細周期構造は残留ひずみのない欠陥を生成することが分かりました。さらに、微細周期構造の見た目の『綺麗さ』を数値化する手法も提案しており、(『Review of Scientific Instruments』に9月13日付で掲載)結晶性と組み合わせて新奇微細加工技術を加速・最大化する整備ができました。

橋田教授は、「これらの新しい知見は材料の形と結晶性を制御した新規機能材料作成にもつながるほか、次世代デバイス開発への重要な指針になります。今後は高時空間分解測定装置をさらに高精度化し、レーザー加工の原理、理論モデルを確立していきたい」と語っています。