国際学科、政治学科、北欧学科が連携してゲスト講義「小国/北欧の政治-今後の繁栄と防衛-」を開講しました

国際学部国際学科と政治経済学部政治学科、文化社会学部北欧学科が連携し、1月17日に湘南校舎でゲスト講義「小国/北欧の政治-今後の繁栄と防衛-」を開講しました。国際学科の小山晶子教授、政治学科の藤巻裕之教授、北欧学科の柴山由理子講師の担当する授業が合同で、来日中のアイスランド大学小国研究センター研究主任のバルドゥル・トールハルソン教授を講師に招いて実施したもの。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請など、アイスランドも含めた北欧5カ国からみた小国の国際政治について講演しました。当日は、各授業の履修学生ら約150名が参加しました。

トールハルソン教授は初めに、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランドの北欧諸国について人口やGDP、軍事力などの概要と、ヨーロッパ各国との比較、小国であるためのウィークポイントについて紹介。北欧モデル(The Nordic Model)と呼ばれる、「成熟した議会制民主主義」や「オープンな民主的政府」「競争力のある市場経済」「包括的な福祉国家」「厳格な環境基準」「強固な防衛」など特徴ある価値観や制度について解説し、「これらを支えているのは人権や女性の権利尊重に加えて、ナショナルアイデンティティとともに北欧であることへのアイデンティティもあります。さらに、これに矛盾しない国際主義の考え方も持っており、北欧理事会を組織し、域内パスポート協定を結び、域内共通労働市場を形成するなどユニークで独特な協力関係を築いています」と語りました。

さらに北欧各国の経済、他のヨーロッパ各国に対する政策や安全保障に関する考え方の違いとその背景についても語り、「各国の意識の差は地理的要因によるものが大きく、アメリカに近い、ロシアに近いなど地政学的条件の違いによって防衛政策に違いが生じている」と指摘。そのうえでフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に向けた動きについて触れ、加盟申請の進捗状況や今後の展望を語るとともに「ロシアのウクライナ侵攻を受けたこの動きは、急激な政策の転換ではありません。この2カ国は冷戦時代において近くにソヴィエト連邦が存在したため、安全保障問題にあたってECやNATOには加盟してきませんでした。ただし、スウェーデンはNATOとの協力関係が強く、武器購入などでNATOの枠外における協力関係があったのです。文化的、経済的統合が進んでいくとその先には軍事、安全保障面での協力が築かれていきます。冷戦が終結しソ連が解体されたのちにはEUに加盟していることから、今回の2カ国のNATO加盟は急激な政策転換とは言えないでしょう」と語りました。

さらに、国連の中における北欧諸国の動きや存在感から、「小国でも政治的意思を持ち、目標に向かってリソースを活用し、各国の政治面における意思決定者たちが国連に影響を与えられるという意識を持ちながら積極的に動いています。北欧諸国のような小国は、さまざまな政策に優先順位をつけるとともに、具体的な分野に着目して内容を深めています」とまとめました。

終了後には質疑応答も行い、「日本を含むアジア諸国では考えにくい北欧5カ国の強力な連携はなぜ成功しているのでしょうか?」「アイスランドではロシアによるウクライナ侵攻を受けて『防衛』の優先順位は上がっているのでしょうか?」など学生たちから多くの質問が寄せられました。