海洋研究所の平朝彦所長が「2022年度東京地学協会メダル」を受賞しました

海洋研究所の平朝彦所長がこのほど、東京地学協会から「2022年度東京地学協会メダル」を受賞しました。1月15日に、東京都・学士会館で表彰式が行われ、併せて受賞記念講演も開かれました。このメダルは、地学分野で極めて顕著な業績を挙げ、国際的にも高く評価される地学者または来日の外国籍の著名地学者に贈られるものです。平所長は、付加体地質学を確立など、海洋掘削研究の国際的発展に対して多大な貢献するとともに、著書『人新世―科学技術史で読み解く人間の地質時代―』(東海大学出版部)をはじめとする優れた著書を数多く出版し、地球科学の普及活動に尽力したことが高く評価されました。

表彰式では、同学会の斎藤靖二会長から平所長にメダルと表彰状が授与されました。平所長は、「斎藤会長をはじめ地学協会の関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。私がここまで研究を進めることができたのは、国内外の先輩方や東海大学の同僚、学生など多くの方々のご協力とご支援があったからにほかなりません。長い歴史を持ち、誇り高い組織である東京地学協会から賞をいただくのはとても光栄なことであり、学術的に重要な実績を残されてきた方々に続けることをうれしく思います」と語りました。

式終了後には、平所長が「四万十帯、南海トラフ、そして地球深部探査船『ちきゅう』」と題して、受賞記念講演に登壇。初めに、沖縄から関東地方にわたって帯状に連続する日本最大級の地層群「四万十帯」に関する研究について解説し、「起源が分からない謎の地層とされていましたが、放散虫化石と古地磁気学の研究から約3000km移動してきた枕状溶岩やチャートなどが海溝でタービダイトと結合してできたと明らかにしました」と語りました。続いて、南海トラフの深海掘削について、船から地震波を出して海底下の地質構造を調べる「反射法地震波探査」で掘削場所を特定し、水深4600mの海底下1300mの掘削によって枕状溶岩まで到達した成果を振り返るとともに、東海大学で行っている混濁流の海底調査の現状について紹介しました。さらに、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」を用いて実施したプロジェクトの掘削記録や現状を説明。海底設置圧力センサーや温度計測器による記録を示しながら、「日本海溝や南海トラフでは、海底下818mの断層で温度異常を検出するとともに、プレート境界最先端にも高温履歴を見つけ、高速地震すべりが海溝域まで届いていたことがわかりました」と話し、海溝津波発生領域を加味した地震と津波震源域を提示。最後に、光ファイバーケーブルを用いた地震・地殻観測など、今後の研究に向けた動きから「未来を拓くための新たな知の体系では、地球科学がベースになるべきです」と提言しました。