海洋学部の後藤教授と鉄准教授が海底熟成酒研究の成果を発表しました

海洋学部の後藤慶一教授と鉄多加志准教授が、4月18日に静岡市清水市民活動センターで清水港内の海中に沈めた熟成酒に関する研究成果を報告しました。清水区で活動するNPO法人「複合力」と同地区の「三和酒造」が製造する地酒「臥龍梅純米吟醸両河内亀の尾2023」の発表会の中で行ったものです。後藤教授や鉄准教授らは、「海底から引き揚げられた沈没船から発見されたお酒はおいしい」という伝承を参考に、産官学連携事業として清水港内に「臥龍梅亀の尾」をはじめとした静岡県の酒蔵で製造された酒を沈め、海底熟成による成分変化について研究を進めています。

当日は、地域住民や静岡市の職員らが聴講する中、鉄准教授が2018年から3年間にわたって沖縄県宮古島で展開した泡盛の海底貯蔵に関する研究成果を発表。貯蔵に必要な工具や適した環境などを説明した上で、「変化は味覚だけでなく、科学的な面からも証明できました。詳細なリサーチを重ねてより良い熟成条件を見つけられれば、地産・地熟・地消のサイクルの確立につながり、地域産業振興に寄与できると考えています」と話しました。続いて、後藤教授が「海底熟成酒の研究開発の試み 宮古島から清水港へ」と題して、21年度から現在までの研究成果を報告。「関係者による官能評価会では、熟成前と比べて旨味や甘味が増し、アルコール感が弱まったとの声が聞かれました。詳しく分析してみると、甘味のもとになるグルコースの量が増えた一方、有機酸の数値が下がっており、官能評価と同調する結果が得られました」と語りました。最後に三和酒造専務取締役の鈴木孝昌氏が登壇し、「今後も試行錯誤を繰り返しながら、海底沈酒にふさわしい銘柄を選定し、清水区はもちろん、静岡県を代表する産物にしていきたい」と抱負を述べました。

後藤教授は、「現在も海底に沈めているボトルがあり、熟成年数による変化も期待できます。より詳細な分析には時間がかかりますが、官能評価も重ねながら、より良い熟成環境を探ります」と語り、鉄准教授は、「日本酒だけでなく、静岡の茶葉を使ったお茶もボトリングして沈めています。どのような変化がみられるかは未知数ですが、地域活性化につながる新しい成果につなげたい」と話しています。