海洋学部の吉田助教が名古屋港水族館の共同研究講演会でスナメリについて講演しました

海洋学部の吉田弥生助教が3月6日、名古屋港水族館が開催した「共同研究講演会 水族館で東海大学の研究授業!」で講演しました。吉田助教は、「都会な名古屋港にイルカが来る?!~スナメリを音で探してみたらいっぱいいた話~」と題して、10年来同水族館などと取り組んできた名古屋港におけるスナメリ(イルカの一種)の生態調査の結果について紹介。約120名が聴講しました。

吉田助教はまず、イルカ同士のコミュニケーション方法や行動学、音響学の概要について紹介したほか、ヒゲクジラ亜目4科とハクジラ亜目10科の違いについて説明しながらハクジラ亜目であるスナメリの生物学的特徴について解説しました。また、スナメリの行動を音響学の視点から探る方法や、バンドウイルカやアザラシ、セイウチなどが出す音、イルカの仲間がエコーロケーションと呼ばれる音の反響で周囲の状況を把握する手段について語り、「音響学の研究者はその音の種類でどのような動物がそこにいるのかわかります。音を一つのツールとして、その動物がその場所に来ているのか調べることができるのです」と話しました。

さらに、伊勢湾や三河湾には3000から4000頭のスナメリが生息していると言われており、その理由として遠浅砂地の環境で、スナメリにとってすごしやすい場所であるためと説明。その中で2011年から名古屋港水族館がスナメリの目視調査を開始し、調査継続に向けて17年に同水族館と東海大学、京都大学、名古屋ECO動物海洋専門学校の4者が協力してスタートした「スナメリプロジェクト」について紹介しました。吉田助教はそれぞれの役割を説明しながら、「調査はその環境を理解し、必要な管理を考え、市民に発信することが目的。環境への意識を高めることで『地域一体型の環境保全』につながる研究を展開していきたい」と語り、音響機器や目視による観察を通じたスナメリの頭数調査の結果や確認できた頭数の季節、時間帯、場所の傾向を解説しました。最後に、「スナメリは春と冬に多く観察されますが、その理由はまだ分かっていません。これからも長期モニタリングを通じて海の物理的・化学的・地学的環境との関係、海鳥など他の生物との相互関係も探っていきたい」とまとめました。

最後に行われた質疑応答では、調査方法やスナメリの生態などについて多様な質問が寄せられ、吉田助教が一つひとつ丁寧に回答しました。