資格教育センターの学芸員課程を受講している学生たちが5月31日と6月2、21、23日に横浜市歴史博物館で体験型イベント「大学生と一緒に展示を楽しもう!」を実施した。同館の展示会「君も今日から考古学者!-横浜発掘物語2024」の関連イベントとして企画したもの。展示会では東海大学所蔵のアンデスコレクションから笛吹きボトル10点も展示され、23日には文学部文明学科の吉田晃章教授(文明研究所、マイクロ・ナノ研究開発センター)によるフロアレクチャーも行われた。
23日のイベントには学生約10名が解説役として参加し、歴史博物館所蔵の石器や土器のほか、神奈川県立伊勢原支援学校の生徒が作った笛吹きボトルやアンデスコレクションのレプリカを展示した。来場者たちは、資料の来歴や文化的な背景、安全な触り方について学生にレクチャーを受けながら、遺物を実際に手に取って触覚を使いながら鑑賞。笛吹きボトルのレプリカを実際に鳴らしてみたり、黒い箱に入った遺物の形状を手触りだけで鑑賞して特徴を確かめたりしていた。実際に触った子どもたちは、「似たような形の土器でも触ってみると全然違う」「笛の音色が面白いね」などとコメント。会場を何度も回りながら、各ブースを楽しむ姿も見られた。
フロアレクチャーでは吉田教授が、文字を持たず音の世界を大切にしていたアンデス文明の歴史や文化的な背景、これまでの研究で明らかになってきた笛吹きボトルの特徴などについて解説。今年5月に東海大学に寄贈された笛吹きボトルの実物も紹介した。
説明員として参加した井上愛未さん(教養学部芸術学科4年次生)は、「子どもにも気軽に楽しんでもらえるよう、話し方や表情に気を使いながら接しました。実際に資料に触ると子どもならではの感想を寄せてくれる子もおり、実際自分がイベントを企画するときにも参考になるような経験ができました」と語った。また企画・運営のリーダーを務めた田中実紀さん(大学院文学研究科日本文学専攻2年次生)は、「今回の企画では、子どもたちに感想を言語化してもらうためにはどのようにしたらいいかを学ぶことができ、資料を触って楽しむユニバーサルミュージアムの可能性も実感できました。東海大学ではこうしたイベントの機会を通じて、博物館に関わるイベントの企画・運営の経験を積み、実践的な力も身についています」と話していた。
吉田教授は、「大学のキャパスがある神奈川県の地元で、アンデスコレクションを紹介できただけでなく、学生さんとも協力してイベントを開催できたことは大きな成果だと思う。こうしたイベントを通して、より多くの人にアンデスコレクションの存在や魅力を知ってもらいたい。今年度はコレクションの授業での活用を広げるほか、笛吹きボトルの製作ワークショップも各地で開く計画になっています。こうした取り組みにもぜひ関心を持ってほしい」とコメント。横浜市歴史博物館の橋口豊学芸員は、「大学生が実習に来てくれること自体が博物館にとってはプラスになりますし、大学が独自に収集したコレクションや研究成果を来場者の人たちに知ってもらういい機会にもなっています。今回のイベントでは、体験を通して考古学的なものの見方をしってもらうこともできたと感じています。今後もこうした連携を深めていきたい」と話していた。