湘南キャンパス15号館で7月2日に、スポーツ医科学研究所内に新設した人工環境制御室(暑熱・常圧低酸素室)「H3-Lab.」の完成を記念したオープニングセレモニーを開催しました。この施設は、暑熱・常圧低酸素環境を人為的に制御でき、通常の環境よりも大きなトレーニング効果が期待されるため、本学所属アスリートのトレーニングはもちろん、科学的検証の場として活用する計画です。本学にはこれまで標高4000mまでの環境を再現できる「低圧室」がありましたが、老朽化と故障が発生したことなどから、国内有数の機能を持つ本施設の設置を決めました。また、セレモニーでは、1980年のモスクワ五輪に選出された本学関係選手を紹介するパネルもお披露目しました。

当日は、3部構成で実施し、木村英樹学長をはじめとした教職員、学生や企業の関係者ら多数が出席。初めに木村学長が、「医学、理工学、経済学など総合大学の力を駆使して日本や世界に通用する選手を大勢輩出していきたい」とあいさつしました。続いて第1部としてモスクワ五輪の代表選出選手のパネルを披露しました。本学スポーツプロモーションセンター(SPC)では、「H3-Lab.」に面した15号館1階のロビーに夏季、冬季の五輪に出場した本学関係者を顕彰する「オリンピックパネル」を設置しています。今回は、政治的な問題で日本などが出場をボイコットしたため出場がかなわなかった山下泰裕教授(柔道男子代表、体育学部)、赤羽綾子氏(女子体操代表、元東海大学体育学部准教授)ら日本代表5選手と、ユーゴスラビア代表として柔道男子95kg級で銅メダルを獲得したラドミール・コバセビッチ氏(体育学部卒)の写真を掲載したパネルを追加しました。
席上、ゲストスピーカーとして赤羽氏と中西英敏名誉教授(1984年ロサンゼルス五輪柔道男子代表)が登壇。赤羽氏は「五輪出場辞退は覚悟をしていたので、通達を聞いたときは冷静に受け止めましたが、『幻の五輪代表』と言われるたびに傷つき、私たちはモスクワオリンピアンと口に出していっていいのかと長い間考えていました。こうして母校にパネルを展示していただき、若い世代の皆さんにも知っていただけたことを心から感謝します」と語りました。中西名誉教授は、柔道部の先輩・同級生だった4選手との思い出を振り返り、「ここに設置されている五輪出場選手のパネルや、総合体育館に掲げられている大学日本一になった部活を紹介するパネルは学生たちにとって大きな励みです。各クラブが協力し、切磋琢磨してさらなる活躍をしてくれることを期待してやみません」とエールを送りました。また、本学男子柔道部コーチで、2024年パリ五輪柔道男子90kg級、混合団体銀メダリストの村尾三四郎選手(体育学部2022年度卒・ジャパンエレベーターサービス)は、「2028年のロサンゼルス五輪で金メダルを取り、パネルを設置してもらえるよう全力で頑張っていきます」と決意を語りました。

第2部では、⼈⼯環境制御室「H3-Lab」を紹介。陸上競技部の高野進監督(体育学部教授)が、「近年はレース終盤で失速する選手も見られるため、暑熱環境を自在に変えられることは大きなメリット」と説明。「この施設を最大限活用して箱根駅伝予選会の突破、さらには本戦でのシード権獲得を目指します」と意気込みを語りました。続いて、駅伝チームの両角速監督(SPC教授)と丹治史弥コーチ(体育学部講師)が、施設の特徴やトレーニングへの効果について説明。両角監督は、「低酸素環境でのトレーニングはチーム強化に欠かせない柱の一つ。箱根駅伝優勝をはじめ、数々の大会での好成績はその成果だと考えています。今後も日常的に練習に取り入れ、強化を図っていきます」と話しました。丹治コーチは、「密閉された部屋の空気は外部に排出可能で、将来的には専用マスクを使用することで、最大10人ほどが同じ低酸素環境で同時に練習できるようになるため、箱根駅伝に出場する全選手が同時にトレーニングすることも可能になります」と紹介しました。また、体育学部在学中に箱根駅伝などで活躍し、現在は大学院体育学研究科で学ぶ村澤明伸さん(2年次生・SGホールディングス所属)がデモンストレーションを披露し、西出仁明コーチ(SPC准教授)がメリットを解説しました。

さらに、水泳部の加藤健志部長(SPC准教授)と、2016年リオデジャネイロ五輪女子200m平泳ぎ金メダリストで卒業生の金藤理絵さんも登壇。金藤さんは、「現役時代には低圧室で厳しいトレーニングを積みました。当時は辛いと感じることも多々ありましたが、その努力があったからこそ五輪で金メダルを獲得できました」と振り返り、「現役の学生にも努力が実ったときの喜びをぜひ味わってほしい。卒業生として心から応援しています」とエールを送りました。
第3部ではスポーツ医科学研究所見学ツアーを実施。同研究所の山田洋所長が案内し、関係者が15号館7階にある施設で取り組んでいるモーションキャプチャーやスポーツ医療、最新機器を用いたけがからのリハビリテーションなど同研究所による最新の成果を紹介しました。また、医学部付属病院の渡辺雅彦病院長と医学部の酒井大輔教授がアスリートを医療面からサポートする「スポーツ医学」の取り組みを紹介。「湘南キャンパスと医学部のある伊勢原キャンパスがさらに密接に連携し、本学のアスリートのさらなる活躍はもちろん、多くの人々の健康にもつながる取り組みを目指していく」と語り、体育学部の内山秀一学部長が、「学内外の皆さまのご協力を得て15号館の研究施設が充実してまいりました。今後も体育学部、大学院体育学研究科、SPC、スポーツ医科研が一体となって研究成果を発信し、飛躍を遂げていきます」と述べました。
■⼈⼯環境制御室(暑熱・常圧低酸素室)「H3-Lab」
設置場所:湘南キャンパス15号館1階
面積:約32.4㎡/容積 約89.2㎥
機能:温度制御範囲5~45℃・湿度制御範囲30~80% 酸素濃度調節範囲20.9~13.0%(通常使用帯:16~15%)、東日本最大級の試験室で試験研究から高所トレーニングまで幅広く対応
設置機材:トレッドミル・Wattbike・SPO2モニタリングシステム・赤外線ドームカメラ







