海洋生物学科の西川教授がジャワ島沖で漁獲されていた大型クラゲを新種記載しました

海洋学部海洋生物学科の西川淳教授を中心とする研究チームがこのほど、インドネシア共和国ジャワ島沖のインド洋で食用として漁獲されているクラゲ類が未記載種であったことを確認し、「アオヘルメットクラゲ(Crambionella helmbiru)」と命名し、新種記載しました。種小名のhelmbiruはインドネシア語で「青いヘルメット」という意味で、現地の漁師がこのクラゲのことを「ヘルメット」と呼んでいることと青い体色にちなんでいます。この研究成果はイギリスの海洋生物学協会による学会誌JMBA(Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom)オンライン版(http://journals.cambridge.org/mbi/jellyfish)[11月17日付]に掲載されています。

西川教授はプランクトン学が専門で、クラゲなどゼラチン質動物プランクトンの生活史、プランクトンの多様性と群集構造、放射性物質の海洋低次食物網への移行過程などについて、 東南アジア諸国から駿河湾までさまざまな海域を対象として、フィールド研究に取り組んでいます。今回確認した未記載種は、根口クラゲ目カトスチルス科Crambionella〔クランビオネラ〕属のクラゲで、2009年に西川教授が未記載種の可能性を指摘。10年には喜多村稔氏(独立行政法人海洋研究開発機構 戦略研究開発領域地球環境観測研究開発センター技術研究員)と大森信氏(一般財団法人熱帯海洋生態研究振興財団 阿嘉島臨海研究所所長、東京海洋大学名誉教授)によって「Crambionella sp.」として簡潔な記載がなされ、以後「Crambionella属」のクラゲとして扱われていました。その後、同種の詳細な形態(縁弁の数、縁弁上の突起列、口腕上の葉状突起、体色など)の観察や、分子生物学的手法(同属2種のクラゲとのミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列情報の比較)から、本種が新種であることが確認されました。

このクラゲは、20年以上前から食用として漁獲されており、一日あたり最大約80トン(約5万個体)水揚げされています。現在のところ、本種の分布等に関する科学的な情報は十分に蓄積されていないため、同種の保全や持続的漁業の実現を目的としたさらなる生物学・生態学的な研究が望まれます。

デザイン分野での産学連携活動の成果を発表しました
<画像:根口クラゲ目カトスチルス科CrambionellaCrambinella helmbiru 」アオヘルメットクラゲ(新称)」 図は論文より転載  写真:インドネシア、チラチャップでの本種の水揚げの様子>