岩岡教授らの研究グループがヒトリラキシンの高収率化学合成に成功しました

理学部化学科の岩岡道夫教授と福岡大学理学部化学科の安東勢津子講師らの研究グループがこのほど、ペプチドホルモンの一つ、ヒトリラキシンを高収率で化学合成する新たな手法の開発に成功しました。ヒトリラキシンは卵巣から分泌される化合物で、子宮弛緩因子とも呼ばれ、妊娠・分娩時の痛みを和らげる役割を持つことが知られています。また、同ホルモンのレセプター(受容体)が心臓や平滑筋、結合組織、自律神経系などにも存在することから多様な生理的調節機能を有することが見込まれ、急性心不全や神経退化性疾患への適用事例が特許出願されるなど、医療用途への展開が期待されています。

これまで臨床実験用のヒトリラキシンは大腸菌を用いた遺伝子組み換え技術(リコンビナント法)により作られていましたが、非常に高価なものでした。岩岡教授らはこれをより簡単に作製する新たな手法を研究。ヒトリラキシンを構成する2本のペプチド鎖を原材料に、より少ない反応手順と単純な精製法を用いて、高純度のヒトリラキシンを高い収率で得ることに成功しました。これにより作製コストが大幅に削減され、今後重要性が増すと考えられるリラキシンの基礎研究や、臨床応用研究に大きく貢献することが期待されます。

今回開発された作製法は特許を出願し、5月14日から16日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「BIO tech 2014 第13回国際バイオテクノロジー展/技術会議-アカデミックフォーラム-」でもこれまでの研究成果を発表しました。岩岡教授らは、ヒトリラキシンの大量供給に向けて化学合成反応のスケールアップを図るほか、ヒトリラキシンの生理作用の解明や、ヒト以外の哺乳類のリラキシンの合成などの研究を行う計画です。