「第2回コンテンツと法シンポジウム」を開催しました

東海大学総合社会科学研究所知的財産部門では7月28日にアルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)で、「第2回コンテンツと法シンポジウム」を開催しました。本研究所は、社会科学系研究の活性化を図るため、新たな社会科学の研究拠点として設立された学術研究機関です。知的財産部門ではファッションやコンテンツにかかわる法律の研究などを通して、知的財産に関する新たな研究分野を切り開いています。今回のシンポジウムは、日本知財学会コンテンツマネジメント分科会との共催で、「諸外国におけるサイトブロッキング法制」をテーマに実施。同分野の法律の専門家や研究者4名が、海外の法制度の概要や運用などについて解説し、大学の研究者や法律関係者、映画・CD・テレビ番組などの制作会社や出版社の著作権担当者、報道関係者ら約90名が参加しました。

サイトブロッキング(SB)とは、漫画や雑誌などの違法コピーを掲載している海賊版サイトへの接続を、インターネットサービスプロバイダ(ISP)などが強制的に遮断する措置で、既に42カ国で導入されています。昨今、内閣府に設置された「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」でも議論されている重要なテーマです。当日は、はじめに日本知財学会理事で株式会社小学館取締役の久保雅一氏が登壇し、「今日は4名の著名な専門家をお招きしています。本シンポジウムの内容に対して、後日、大きな反響があることを期待しています」とあいさつ。続いて、総合司会を務めた本学創造科学技術研究機構の内田剛助教が、「海外のSB関連法の解釈や運用を踏まえ、日本におけるSB実施に関する課題を抽出し、可能な解決手段の提示につなげたい」と、シンポジウムの趣旨・目的について説明しました。

講演では、アメリカ映画協会の海外代理団体であるモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)ヴァイスプレジデントのマイケル・シュレシンジャー氏が、シンガポールにおけるSBの法制度について紹介し、「SBは現段階において、各国がオンラインによる著作権侵害と闘い、オンライン上での知的財産権保護の支援環境をつくるために使用できる重要なツール」と語りました。続いて、総合社会科学研究所研究員でもあるTMI総合法律事務所弁護士の関真也氏が、オーストラリアにおけるSB法制の概要や、著作権、表現の自由、知る権利といった各権利のバランス、SBの有用性などについて説明。総合社会科学研究所の角田政芳所長は、ドイツにおけるSBの間接侵害の概要や今後の方向性に関する直近の判例を紹介し、わが国では著作権法の解釈としてSBが認められるのに、その検討がなされていないという問題があることを解説しました。また、明治大学情報コミュニケーション学部准教授の今村哲也氏は、イギリスにおけるSB対象サイトの認定基準やSBを実施するための手続き、コストの負担者といった具体的な運用について説明しました。最後に、内田助教が4名の講演の骨子を取りまとめて紹介。終了後には、多くの参加者が登壇者に個別に質問する姿が見られました。

なお、講演者とテーマは以下のとおりです。

◇マイケル・シュレシンジャー氏(モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)ヴァイスプレジデント、リージョナル・リーガルカウンセル アジア太平洋地域担当)
「サイトブロッキングの法制化“世界のベストプラクティス”~シンガポールシンガポールの法制度を例に~」

◇関 真也氏(TMI総合郷律事務所 弁護士)
「オーストラリアにおける海賊版対策としてのサイトブロッキング法制の概要と成り立ち~表現の自由、技術的課題、サイトブロッキングの有効性などに関する立法過程における議論を交えて~」 

◇角田政芳所長(東海大学総合社会科学研究所)
 「ドイツにおけるサイトブロッキングの間接侵害構成について」

◇今村哲也氏(明治大学情報コミュニケーション学部 准教授)
 「英国におけるサイトブロッキング法制とその運用状況について」

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