顕微鏡観察用のナノシート「Myell(マイエル)」の本格販売が始まりました

本学マイクロ・ナノ研究開発センターの喜多理王所長(理学部教授)らが中心となって設立した大学発ベンチャーである株式会社チューンがこのほど、顕微鏡観察用ナノシート「Myell(マイエル)TM」の本格販売を開始しました。本センターと株式会社ニコンインステックが進めている共同研究の成果と本学の特許技術を生かした顕微鏡観察で一般的に使われているカバーガラスの代替品として利用できる高分子超薄膜で、バイオサイエンスやメディカル、生物学などさまざまな分野への貢献が期待できます。実験用機器等の販売を手掛けているフナコシ(株)からの独占販売となります。

カバーガラスを使って試料を分析する場合、時間が経つに従って試料が乾燥などで変化することが避けられず、試薬などを投入すると試料が動いてしまい充分な観察ができないといった欠点がありました。「Myell」はそうした課題を解決する画期的な新商品で、脳神経細胞や生体組織、浮遊細胞などを覆うことで変形や移動を防ぎ、長時間観察・高精細画像取得を可能にするポリ乳酸製の「Myell S」と、撥水・撥油性を備え乾燥防止効果を高めたCYTOP製の「Myell D」、極小の穴を多数開けて試薬などの透過性能を持たせたポリ乳酸製の「Myell P」の3種類を販売しています。使い方はいずれも極めて簡単で、カバーガラスの上に試料を乗せ、「Myell」を上から押しあてるだけで、試料をラッピングすることが可能。神経細胞の様子を詳細に観察してより細かく分析したり、試料に薬剤を投与した瞬間から、作用していく経過を経時的に観察したりできるようになります。

喜多所長は、「東海大学発の知的財産を社会に還元できるのは私たちにとって大きな喜びです。この技術はさまざまな分野の発展に貢献できるものであり、ぜひ多くの人に使ってもらいたい。また、東海大学は建学当初から、志のあるあらゆる人々に教育の機会を提供することに力を入れてきました。私たちも将来は、本商品の収益をもとに、大学院進学や海外留学を志す若者たちを支援する奨学基金を設立したいと考えています。一方、本センターでは高分子超薄膜だけでなく、マイクロ流体デバイスやマイクロセンサなど、高い可能性を秘めた新技術の研究開発を進めています。こうした技術も社会に還元できるよう、医理工連携研究をさらに加速させていきたい」と話しています。

Myell525.jpg