医学部付属病院が「聴こえの大切さ」をテーマに市民公開講座を開催しました

伊勢原キャンパスの医学部付属病院では4月12日に松前記念講堂で、市民公開講座「聴こえの大切さについて~認知症やうつ病などとのつながりも~」を開催しました。聴覚や視覚、嗅覚などの感覚器疾患に関する医療のさらなる充実を目指して今年4月に開設した感覚器疾患センターが、聴覚疾患に関する最新情報を提供するために企画したものです。専門医による講演に加え、企業の協力を得て補聴器と人工内耳のデモンストレーションも実施し、近隣住民ら約170名が参加しました。

初めに、大上研二医学部長(本病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)が登壇。「聴覚はコミュニケーションの基本であり、難聴は社会的孤立や精神的な負担を招くなど心身に大きな影響を及ぼします。今日は、聴力や難聴に関する理解を深め、皆さんの健康管理に役立ててください」とあいさつしました。

講演では、札幌医科大学耳鼻咽喉科教授の高野賢一氏が、加齢に伴って発症する加齢性難聴の概要や認知症との関連、予防法を解説。補聴器や人工内耳の使用による認知機能低下の抑制効果についても紹介し、「健康寿命を延ばすためにも聴力を保ってほしい」と呼びかけました。続いて本病院感覚器疾患センター長の和佐野浩一郎教授(耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療科長)が、「聴こえにくさを感じたら耳鼻科で検査することが大切」と語り、聴力の検査方法と補聴器や人工内耳を用いた難聴の治療法を説明。本病院の補聴器外来についても紹介し、「補聴器の装着は耳のリハビリテーションです。自然に聴けるようになるまで、医師や言語聴覚士らがチームで患者さんをサポートしていきます」と語りました。講演後には多くの質問が寄せられ、講演者が丁寧に回答しました。

終了後には、ロビーに設置した補聴器と人工内耳の展示ブースで、参加者が機器の説明を受けたり、体験したりする姿が見られました。参加者は、「聞こえにくいのは年齢のせいとあきらめていましたが、自分に合った補聴器を選んでトレーニングすれば聞こえるようになると分かって安心しました。さっそく耳鼻科に相談します」「難聴が認知機能の低下に影響することを家族や知人にも伝え、予防に努めたい」と感想を話していました。

なお、当日は医療従事者を対象に、「聴覚診療における医療機関連携システムの構築に向けて」と題した「感覚器フォーラム」も開催。和佐野センター長らが診療ネットワークの構築や遠隔医療、感覚器疾患のリハビリテーションなどについて講演し、地域の医師らとの情報交換も行いました。