医学部の亀谷美恵客員准教授らの次世代型「免疫ヒト化マウス」に関する研究成果が『Frontiers in Immunology』に掲載されました

医学部の亀谷美恵客員准教授(先進生命科学研究所、マイクロ・ナノ研究開発センター)らの研究グループが、免疫反応をよりヒトに近い状態で再現できる次世代型「免疫ヒト化マウス」の開発に成功。その成果をまとめた論文が昨年11月26日に、学術誌『Frontiers in Immunology』オンライン版に掲載されました。

ヒトの免疫反応を生体内で再現できる「免疫ヒト化マウス」は、感染症やがんなどの治療薬の研究開発に不可欠です。しかし、これまで使われている免疫ヒト化マウスは、病原体を認識して体を守るB細胞(白血球中のリンパ球)の生存期間が短く、複雑な免疫反応を再現しきれないため、薬剤の適切な評価が難しいことが課題になっていました。亀谷准教授らは、マウスが本来持っている免疫機能を失わせた上で、ヒトの免疫を働かせるタンパク質「インターロイキン4(IL-4)」の産生に関わる遺伝子を挿入したトランスジェニックマウスを作製。このマウスにヒトの白血球を投与することで、一定期間、健康なヒトと同じ免疫反応を示す「免疫ヒト化マウス」の作成に成功しました。

亀谷准教授は、「これまで、免疫ヒト化マウスの作製に使われていた造血幹細胞ではなく、白血球を用いたのがポイント。造血幹細胞は母親のへその緒という特殊な臓器からしか採取できませんが、白血球なら血液を遠心分離機にかけるだけで簡単に採取でき、保存性や生着率に優れ、コストもそれほどかかりません。リンパ球の作用や抗体反応などを、ヒトに近い状態で比較的長い期間にわたり再現できるため、より正確に薬剤の評価ができます」と意義を説明します。

このマウスのメリットは、がんなどに罹患した患者自身の血液を使える点にもあります。患者の白血球を免疫ヒト化マウスに移植することで、「免疫チェックポイント阻害剤」など、免疫反応を利用した薬の効果を事前に推測できるため、個別化医療にも貢献できます。また、感染症から治癒した患者さんの白血球をこのマウスに移植し、その体内で作られた抗体を用いることで、簡便かつ速やかに抗体製剤を作れる可能性があると期待されています。

亀谷准教授は、「抗がん剤の開発を最終目標として研究を続けてきました。このマウスはその基盤になると考えています。汎用性があり、誰でも簡単に作製できるからこそ少しでも早く市場に出し、多くの研究者に使ってほしい。このマウスをベースとして、より機能的な免疫ヒト化マウスが開発されれば、薬の開発を加速できます。患者さんに有用な薬剤の開発に向けて、さらに努力していきます」と話しています。

※『Frontiers in Immunology』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2025.1670682/