工学部応用化学科の岡村陽介准教授が日本バイオマテリアル学会の科学奨励賞を受賞しました

工学部応用化学科の岡村陽介准教授(マイクロ・ナノ研究開発センター)が、「生分解性超薄膜の創製と貼るナノ材料としての医用展開」に関する研究で日本バイオマテリアル学会の科学奨励賞を受賞。11月21日から22日まで福岡国際会議場で開催された同学会のシンポジウムで、表彰式と受賞講演が行われました。この学会は、生体に使用する材料とその応用に関する科学・技術の発展・向上を目的として活動しています。同賞は、バイオマテリアルに関する優れた論文を発表している40歳未満の研究者に授与されるものです。

岡村准教授は、厚さ10億分の1メートルほどの高分子超薄膜(ナノシート)の接着力に着目。体内で分解していくポリ乳酸を用いたナノシートをマウスの胃の傷に貼る実験で、糸で縫合するよりも癒着や傷痕の少ないことを明らかにしました。さらに、ナノシートを簡便に作る方法を確立。複数枚を重ねて強度を確保し、各層に止血剤などの薬剤を含ませるなどの実用化に向けた研究は、「未来の絆創膏」として注目されています。また、粉末状に裁断したナノシートを水と混ぜてスプレーすることで、どんな形状の傷口にも対応できるシートも開発しました。最近では、通常は球体になってしまう薬剤入りのナノサイズの粒子に一定の熱と圧を加えることで、簡単にディスク状にすることに成功。薬剤入りの粒子を平らにして接着面を広げることで接着力が向上し、血管内から患部にピンポイントで薬剤を届けるドラッグデリバリーシステム(DDS)による治療効果をより高めることができると期待されています。

「どんなに有効な製品であっても、簡単に作れなければ意味がない」というのが岡村准教授のモットー。「実用化に向けて、コストや手間をかけずに作製する方法をひたすら考え抜きます。他学部の研究者や学生たちとの交流を通じて問題解決の糸口が見えてくることもありますし、市販されている新しい医療関連の商品や、時には子どものおもちゃがヒントになることもある。難しい課題にあたっても“やり抜く”という強い気持ちを持ち続け、望んでいたものが完成したときの喜びは大きいものです。東海大学が掲げる、『自ら考える力』『集い力』『挑み力』『成し遂げ力』の4つの力は、本当に大切だと実感しています」と話します。

「賞をいただいたことを大変光栄に思います。常に研究に対して刺激を与えてくれる工学部やマイクロ・ナノ研究開発センターの先生方、学生たちに感謝しています」と岡村准教授。「受賞講演後、企業や大学の研究者から今後の展開や実用化に向けての多くの意見をいただきました。この研究が注目され、期待されていると思うと気合いが入ります。今後も世の中の役に立つ医療材料の研究を続けたい」と抱負を話しています。

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