医学部・中川助教らの研究グループがエボラウイルスの感染効率上昇に寄与する塩基突然変異を同定しました

2017年01月13日

医学部医学科基礎医学系の中川草助教(マイクロ・ナノ研究開発センター)の研究グループが、2013年から16年にかけて西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱の原因ウイルス(エボラウイルス)がアウトブレイク(集団発生)した要因の一つを解明しました。この研究成果は、長崎大学熱帯医学研究所や京都大学ウイルス研究所などと共同で行っているもので、1月13日に配信される学術誌「Genes to Cells」の電子版に「Functional mutations in spike glycoprotein of Zaire ebolavirus associated with an increase in infection efficiency」のタイトルで掲載されました。

エボラウイルスは現在までに5種類あることが明らかになっていますが、その中でもザイール(Zaire)種は致死率が高く、2013年のアウトブレイクでも猛威を振るいました。Zaire種を含め、エボラウイルスはヒトでの感染報告例が今回のアウトブレイク以前では少なかったことから未解明の点も多くあります。中川助教らは、エボラウイルスの表面にあり、人体に侵入する際に重要な役割を果たす糖タンパク質に着目。約1200本のZaire種ウイルスのゲノム配列を解析し、その中からウイルスの生存に有利に働いた塩基突然変異が糖タンパク質のA82VとT544Iというアミノ酸置換を引き起こすものであることを特定。A82VとT544I変異ウイルスの人への感染価は、変異前に比べてそれぞれ1.8倍と4.3倍に上昇したことを明らかにしました。しかし、今回の感染では比較的緩やかな感染価の上昇を示すA82V変異ウイルスの方が多く集団に広がり、一方でT544Iは感染初期に少なくとも3回独立に獲得されたものの、全く集団に広がらなかったことを確認。今回のアウトブレイクでは比較的緩やかな感染能を持つA82Vが大きな役割を果たしていたことを明らかにしました。

中川助教は、「感染症のウイルスは通常、人の体内に入ってから一定量まで増えないと他の人には伝染しません。T544Iの変異ウイルスに感染した人はすぐに発症して、隔離もしくは短期間に死亡してしまう一方、A82Vで変異が起きたウイルスは感染能が比較的緩やかだったために患者が一定期間生存できたためにむしろ集団に感染が広がってしまったと考えられます。そのため、感染価の緩やかな向上の塩基突然変異の方が結果的に今回のアウトブレイクで集団に広がったこと明らかになりました。エボラウイルスは今のところ根本的な治療法がなく、またいつどこでアウトブレイクが起きるか分からない状態です。今後も基礎研究を重ね、エボラウイルスの病原性に関わる因子を明らかにし、今後の対策に貢献したい」と話しています。

なおこの研究は、長崎大学熱帯医学研究所、京都大学ウイルス・再生医科学研究所が共同で実施し、文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業、科学技術振興機構(CREST)日本医療研究開発機構(AMED)などの資金援助を受けて行われました。

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