食生命科学科の永井竜児教授が「KAWASAKI DEEP TECH ACCELERATOR」に採択されました

農学部食生命科学科の永井竜児教授がこのほど、研究開発型スタートアップの創出を支援する「KAWASAKI DEEP TECH ACCELERATOR」に採択されました。採択課題名は「フマル酸制御型First-in-Class動脈硬化治療薬・2SC診断事業」で、永井教授はこれまで取り組んできた動脈硬化に関する研究成果を社会実装につなげるため、予防・治療薬の開発を目指すスタートアップの設立に向けて準備を進めています。「KAWASAKI DEEP TECH ACCELERATOR」は、川崎市が実施する研究開発型ベンチャーの創出・成長支援プログラムです。大学や企業などが持つ技術を活用して新たな事業の立ち上げを目指す研究者や、創業初期のベンチャー企業などが対象で、さまざまな分野の事業経験や専門知識を持つメンターによる伴走支援をはじめ、投資家からの資金調達、公的機関の競争的資金獲得、事業会社との提携に向けたマッチングなどの支援が展開されています。

永井教授は長年にわたって、生活習慣病や老化にかかわる生体内反応について研究を続けてきました。その過程で、肥満などに伴って生じる代謝の変化と動脈硬化との関係に着目。病気の進行に関する従来とは異なるメカニズムで動脈硬化が進行する新たな経路を見いだし、学術論文にも採択されています。現在は、その経路を抑制する物質を用いた動物実験で、血中の代謝物を低下させるとともに、動脈硬化の進行を抑制する結果も得ています。研究成果の一部についてはすでに特許を取得しているほか、2026年5月には動脈硬化の予防・治療薬につながる技術について新たに国際特許出願(PCT出願)も行いました。永井教授は、「こうした成果を医薬品として実用化するためには、さらなる研究開発に加えて、資金調達や知的財産戦略、製薬分野の専門人材との連携が必要になります。当初は、自らスタートアップを立ち上げることを検討していましたが、創薬には長期的かつ大規模な研究開発が必要になることから、外部資金や専門家の支援を活用しながら事業化を進める方針としました」と話します。

「KAWASAKI DEEP TECH ACCELERATOR」では、ベンチャーキャピタルをはじめとする専門家から、起業戦略や資金調達、事業化に向けた助言を受けています。永井教授は2027年3月までのプログラム期間中に、製薬分野をはじめとする専門人材とのマッチングや、今後の研究資金獲得に向けた検討を進めていきます。また、創薬研究については、大阪大学などの研究機関とも連携。これまでに見いだした候補物質をもとに、医薬品としてより高い効果が期待できる化合物の探索や安全性の検討なども進めます。

永井教授は、「研究成果の論文を出すだけでは動脈硬化に苦しむ患者さんを減らすことはできません。実際に人に役立つ薬として世の中に届けるところまで進めたい」と話します。今後は同プログラムによる支援を受けながら、スタートアップの設立と新たな動脈硬化予防・治療薬の実用化を目指します。

なお、永井教授が大会長を務める「第36回日本メイラード学会年会」が10月24日(土)に、阿蘇くまもと臨空キャンパスで開催されます。「メイラード反応研究の新地平―食品から生体まで―」をテーマに、シンポジウムや若手研究者奨励賞候補者による発表、一般演題の口頭・ポスター発表などが予定されています。