マイクロ・ナノ研究開発センターの木村啓志教授(工学部生物工学科兼任)が、3月12日に、オンラインで開催された「再生・細胞医療・遺伝子治療~AMED~新技術説明会」(主催=科学技術振興機構、日本医療研究開発機構)で講演しました。木村教授は「生体模倣システムのための高汎用型流体プラットフォーム」をテーマに発表。2017年度から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が展開している事業に採択され、さまざまな研究機関や大学・企業の研究者とともに「創薬における高次in vitro評価系としてのKidney-on-a-chipの開発」に関する研究を展開してきた過程を踏まえ、最新の成果を披露しました。
木村教授はまず、創薬分野での応用が進んでいる「生体模倣システム(MPS)」について、すでに実用化されているシステムの大きさや操作性、価格などの課題を指摘。それらを解決する画期的なシステムとして、自身が中心となって東京応化工業株式会社と共同開発してきた「Fluid3D-XⓇ」の性能を紹介しました。また、創薬における腎臓評価のニーズに特化して取り組んできた腎臓の近位尿細管モデル「Kidney-MPS」の構造について説明。株式会社ニコンなどと共同開発した細胞観察自動化装置「BioStation CT for MPS」を使って得られた腎毒性試験などのデータをひも解き、成果を紹介しました。
さらに、産官学連携のAMED-MPS事業により国産MPSデバイスの製品化が進められている現状も紹介。「これからMPS利用が創薬プロセスのスタンダードになっていきます。実用化に向けて、細胞技術・デバイス・材料・情報 科学・ロジスティクス・レギュラトリーサイエンスなどさまざまな角度からの取り組みが重要です」と指摘しました。また、装置の小型化や低コスト化が可能となり、初期コストが1/100程度まで削減されることや、細胞培養に加え細胞のリアルタイムでの光学的・電気化学的観察・評価への応用も可能となった特許発明の優れた性能をアピール。最後に、「MPSを開発中の企業、MPS分野への展開を考えている企業に、本特許技術の導入を期待したい。今後は、製薬・食品・化成品・化粧品など、MPSニーズを有するユーザー企業との共同研究を希望しています」と展望を話しました。