内田裕久教授が開発したナノ化鉄チタン水素吸蔵合金タンクが実用化されました

工学部原子力工学科の内田裕久教授が開発した水素吸蔵合金を使用した水素貯蔵タンクがこのほど、公共基幹産業向けの資材を扱う那須電機鉄工株式会社によって実用化されました。

水素エネルギーは、電気を長期間貯蔵できるだけでなく、地上にふんだんにある水を原料とすることから将来のエネルギー源として国際的にも注目を集めています。水素吸蔵合金は貯蔵技術の核として重要な役割を担っていますが、これまでは高価なレアアースを使ったものや、反応性が低いものが主流だったため、普及に向けた大きな障壁となってきました。

内田教授は、那須電機鉄工や東京都立産業技術センターと「関東経済産業局地域新生コンソーシアム研究開発事業」を立ち上げ、2001年ごろから鉄とチタンを用いたナノ化合金の開発に着手。自己体積の1000倍もの水素を長期的に保存でき、水素を高圧ガス規制にかからない10気圧以下で貯蔵することも可能となる反応性の高い、安価な合金の開発に成功しました。

今回実用化されたタンクは、直径16.5cm、長さ1.5mで、水素を約5500ℓ貯蔵することが可能。7300回の吸蔵・放出サイクル(1日1回で約20年分に相当)を経た後も機能が劣化しないことも確認されています。

内田教授は、「水素は燃料電池システムや燃料電池車のエネルギー源としてはもちろん、風力など発電量が一定ではない再生可能エネルギーの電力を水素として貯蔵して有効活用する際にも大いに活用できます。また、今回の技術は、ニーズに応じてさまざまなサイズのタンクにも応用できるのも大きな特徴となっており、水素利用の新たな一歩を開くと期待しています。これまで日本はエネルギー源を外国に頼らなければならず、自給率の低さが課題となってきました。今回の技術が自給率向上に少しでも貢献できればうれしい」と話しています。

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