光・画像工学科の三上客員教授が開発した「光ピン」技術が実用化されました

2020年01月11日

工学部 光・画像工学科の三上修客員教授(元 光・画像工学科教授)が開発した光通信用デバイス「光ピン」がこのほど、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)が開発した最新型の光モジュールに活用されました。この光モジュールは、PETRAから独立したアイオーコア株式会社が製品化し、来年春には本格的な量産が行われる予定です。

世界で最も早く信号を伝えられる「光」は、すでにインターネット回線の分野では広く使われ、大容量・高速通信の実現に大きく貢献しています。しかし現在の課題として、光ケーブルで通信している部分は高速で送れるものの、情報を送/受信するコンピューターなどの中は従来の金属を使った配線に頼らざるを得ず、高速化を妨げる要因の一つになっています。またこれまでの技術では、光ケーブル中の光路が直径50μmである一方、電気信号と光信号を相互に変換するための光トランシーバーでは通信データを受信する光検出器の端子が30μmの大きさになっているため、仮に光通信で通信データを送っても効率良く受信できないといった課題も抱えていました。

三上客員教授は、その課題を解決すべく日産化学、PETRAなどと共同で「光ピン」の技術を開発してきました。2012年ごろからは、光・画像工学科の藤川知栄美教授も加わり、とくに実用化のための検討を重ねてきました。

「光ピン」は紫外線硬化樹脂という透明なプラスチックでできた直径50μm,長さ数百μmの構造を有しています。送られてきた光データをほぼ100%受信し、決められた幅に縮小・拡大できるため、光ケーブルと検出器のサイズの違いをクリアできます。また、従来0.3μm程度の厚みしか持たせられなかった原材料の紫外線硬化樹脂を、200~300μmの厚さにまで積層し、黒地のプレートにさまざまなパターンの開口部の上から紫外線を当てることで、まったく同じ形状の「光ピン」を大量に作製できる方法を初めて提案して技術を確立しました。

これによって半導体チップ内と外部光ケーブルとが効率良く繋がり、大幅に通信速度が高速化され、消費電力や半導体の発熱も抑えることが可能になりました。NEDOとPETRAが開発した世界最小規格の光モジュールでは、光ケーブルからの通信データを送/受信する「超小型光トランシーバー」の配線に光ピンを利用。従来のデータ速度を大幅に上回る400Gbpsを実現しています。

三上客員教授は、「この技術は学生とのディスカッションから生まれたもので、これまで研究に携わってきた卒業生からも驚きと喜びの声が寄せられています。1995年ごろに内田禎二先生(東海大学 総合科学技術研究所=当時)と、この分野の研究を始めた当初は半導体チップと光ケーブルを接続するアイデアは乏しく、この技術も“突拍子もないアイデア”と言われ、学会でもあまり注目されることはありませんでした。しかし研究を続ける中で、光を使って情報を伝達する『光インタコネクション』という言葉も今や一般的になってきました。こうした基礎的で、地道な研究が日の目を見るようになったことが何よりもうれしい。光通信の可能性はまだまだ広がっているので、今後もさらなる可能性を模索していきたい」と話しています。

藤川教授は、「三上先生より声をかけていただき共同研究を続けております。従来の『光ピン』は先端部分の形状が平らなものだったのですが、現在は、先端にとても小さなマイクロレンズを作製する技術の開発を行っています。光インタコネクションの分野の他にも、光ケーブルを使わず大気中に直接レーザ光を伝搬し通信を行う光空間伝送にこの技術を適用するなど、さまざまな技術を組み合わせて応用の幅を広げていきたい」と話しています。

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