三佐川亮宏教授が第108回日本学士院賞の授賞式に出席しました

文学部歴史学科西洋史専攻の三佐川亮宏教授が2018年度の第108回日本学士院賞を受賞し、6月25日に天皇・皇后両陛下のご隣席のもと東京・上野の日本学士院会館で開かれた授賞式に出席しました。式典前には、両陛下に三佐川教授ら受賞者が研究成果を説明。授賞式では塩野宏院長から賞状と賞牌が贈られました。終了後は、皇居宮殿で開かれた両陛下主宰のお茶会に招かれ、両陛下の他、皇太子殿下、秋篠宮殿下御夫妻と研究について歓談しました。

日本学士院賞は、1911年(明治44年)に創設され、学術上特に優れた論文、著書その他の研究業績に対して贈られています。日本の学術賞としては最も権威ある賞とされ、2018年度で108回を数えました。授賞式は、1949年(昭和24年)以来天皇陛下の行幸を、1990年(平成2年)からは天皇皇后両陛下の行幸啓を仰いで挙行されています。

三佐川教授は、北海道大学文学部史学科西洋史専攻を1983年に卒業後、同大学院文学研究科西洋史学専攻修士課程を1986年に修了。1987年から1990年の間、ドイツ学術交流会(DAAD)の給費留学生としてボン大学に留学し、1991年に同博士課程を中途退学して、北海道大学文学部歴史学専攻の助手を務めました。1994年に本学文学部講師として着任し、准教授を経て2009年から教授に就任しています。2011年には北海道大学大学院文学研究科において博士号(文学)を取得しました。また、2011年から2012年の間、ウィーン大学オーストリア史研究所、ベルリン・フンボルト大学比較中世史研究所に客員研究員として滞在しました。

専門分野はドイツ中世史で、今回の受賞は、上記博士論文を基にした『ドイツ史の始まり―中世ローマ帝国とドイツ人のエトノス生成』(創文社、2013年)に対して与えられました。ドイツ民族の形成を、中世ローマ帝国を枠組みに多角的に論じる視点と、膨大な史料を駆使した文献実証主義的方法が高く評価されたものです。

三佐川教授は、「各分野で高い功績を収めた理系の研究者の受賞が多い中、中世ドイツ史の地道な研究成果を評価していただいたことは大変光栄なことです。この研究は、ドイツ留学中の1989年にベルリンの壁崩壊を目の当たりにし、“ドイツ人とはどのような成り立ちで誕生したのか”を知りたい思ったことがきっかけで始まったものですが、著書としてまとめ、また受賞できたことは研究者として大きな区切りになったとも感じています。著書で扱った10世紀という時代は、1000年も前の現代とはかかわりのない時代のように思うかもしれません。しかし、異なる国家・民族によるEU統合が実現した背景には、中世ローマ帝国のもとで育まれた一体性があるなど、決して現代社会と無関係ではありません。現在、そうした時代への興味・関心を学生や一般の方に持ってもらうきっかけにしたいと、中世ドイツの年代記の翻訳出版も進めています。一般の方向けの著作なども通して、中世ドイツの歴史を紹介する活動にも力を入れていきたい」と話しています。

【三佐川教授の近著】
・著書
『紀元千年の皇帝―オットー三世とその時代』(刀水書房、2018年6月)
・訳著
『ザクセン人の事績』 コルヴァイのヴィドゥキント著(和泉書館、2017年4月)

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