講演会「メキシコ西部における岩絵群とロス・アガベス遺跡の発掘調査から考察する地域間交流」を開催しました

湘南キャンパスで7月11日に、講演会「メキシコ西部における岩絵群とロス・アガベス遺跡の発掘調査から考察する地域間交流―拓本採取作業と地質調査をふまえた中間報告―」(2019年度東海大学史学会第1回例会)を開催しました。文学部文明学科の吉田晃章准教授が研究代表者を務めている総合研究機構の採択プロジェクト「岩絵群と神殿建築から究明する先スペイン期メキシコ西部の社会文化発展」(2017年~2019年)と科学研究機補助金の採択を受けた「メキシコ西部地域の埋葬文化から探る文化間交流」(基盤研究(B))(2014年~2017年)のこれまでの研究成果を報告する機会として開いたもので、教員と学生約20名が参加しました。

講演では、吉田准教授が「同地域の遺跡研究は端緒についたばかりで、文字資料もほとんど残っていない」と現状を紹介した後、研究グループがメキシコ中部のロス・アガベス遺跡で行った発掘調査の成果を解説。「有名なテオティワカン遺跡でも見つかっている刻点十字紋が遺跡周辺の水辺で特異に集中して見つかっており、遺跡は発掘調査によって方形の大型祭壇やピラミッドで構成されていることが判明しています。またその様式は、遺跡の東部地域と西部地域で見られる2つの様式を組み合わせたものになっていることから、双方の文化の結節点に設けられた遺跡であった可能性があります」と指摘しました。

また、ロス・アガベス遺跡近郊のルス湖周辺や遺跡の位置するロス・アトルス地方で初めて行った岩絵の大規模調査と拓本採取、遺跡の分布調査の成果も発表。「周辺地域に1000点を超える岩絵が残されており、渦巻き状の模様や岩に半球形の穴をうがったポシトと呼ばれる形式のものが多い」と説明するとともに、岩絵のすべてが流紋岩と呼ばれる火山性の岩盤に水が流れている場所に刻まれており、類似の岩絵が日本をはじめ世界各地に残っていることから、「メキシコの岩絵も水と関係が深いことが予想される。穴をあける行為自体が、水にかかわる何らかの儀礼と関わっていたとも想像できる」と語りました。

吉田准教授は、「ロス・アガベス遺跡の発掘もまだ端緒についたばかりであり、今回発見された他の遺跡や岩絵群についても今後さらに研究を進め、総合的な分析と解釈を進めていきたい。また、流紋岩に描かれた岩絵は風化が進みやすい傾向もあるため、その保存についても検討していきたい」と話しています。

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