大学院生3名が日本機械学会年次大会の卒業研究コンテスト部門で最優秀賞を受賞しました

左から美濃さん、永田さん、小野さん

大学院工学研究科機械工学専攻1年次生の3名が、9月3日から6日まで東京都立大学南大沢キャンパスで開催された日本機械学会2023年度年次大会の卒業研究コンテスト部門に出場。小野丈さん(指導教員=落合成行教授、畔津昭彦客員教授)と永田凌士さん(指導教員=甲斐義弘教授)が最優秀発表賞を、美濃哲さん(指導教員=砂見雄太准教授)が優秀発表賞を受賞しました。このコンテストは全国の機械系学部の学生が4年時に行った卒業研究の成果を発表し、研究内容や予稿集原稿の完成度、質疑応答の的確さなどの観点から評価され、優れた発表が表彰されるものです。

小野さんの研究テーマは「尿素SCRシステムのNOx浄化効率向上に向けた噴霧液滴分布の可視化計測~管内ガス温度・溶液違いによる分布変化の検証~」です。トラックなどのディーゼルエンジン車に搭載されている尿素SCRシステムは、地球温暖化や環境汚染の一因とされる排ガス中に含まれる有害物質(NOx)を浄化するもの。排気管の中に尿素水を噴射して有害物質と化学反応させ無害化しており、小野さんの研究はその浄化効率の向上を目的に、世界でもまだ試みられていない管内で起こっている反応状況の可視化に着目。特別な管内模擬装置を製作し高感度カメラで内部の状態を撮影して解析を進めました。「些細な振動で映像にずれが生じ、管内のガス温度を変えると空気の屈折率も変化するのでその度にカメラの設定を対応させるなど、撮影は精密で非常に手間のかかる作業でした。それが報われてうれしい」と振り返ります。「浄化効率を上げるために尿素水の水滴を細かくする壁面の微細加工の実機搭載を目指し、研究室で特許を出願しています。高性能な内燃機関は、飛行機や船、大型トラックなどパワーを要するものには必須の技術。将来は自動車メーカーなどでこれまで得た内燃機関の知識を生かしたい」と目を輝かせました。

永田さんが取り組んでいるのは、「エネルギー消費と安全性を考慮したメカニカルブレーキを有するアシストスーツの開発(設計および実験)」です。アシストスーツは、人体に装着して作業の身体的な負担を軽減します。現状で使われているものの多くは動力のモーターがコンピューターで制御されており、コンピューターの故障などが原因で動きが制御できなくなると周囲に危害をもたらす懸念もあります。永田さんは、コンピューター制御を介さずにバネなどを用いたブレーキ装置を搭載して安全性向上を図ろうと、ブレーキ装置を開発するにあたって使用するバネの選定やギアの噛み合い方などを考えパーツの設計をし,実験を繰り返し行い、結果的に消費電力も従来の8割に抑えたアシストスーツの開発に漕ぎつけました。「重いものを持ち上げるときには電力を使い、その状態を維持する時には電力を消費しないシステムも構築できました。実用化に向けて念頭に置いているのは災害救護の現場です。さらに研究を深め、瓦礫を取り除いたりケガ人などを搬送したりする現場での実用化を目指したい」と展望を語っています。

美濃さんの研究は、「搬送方向における膜厚の不均一性が巻取りロール内部応力に及ぼす影響」です。私たちの身の回りにある紙やプラスチックフィルム、有機ディスプレイなど柔軟かつ軽量な素材は総称して「ウェブ」と呼ばれます。これらはロールを介して搬送され、印刷などさまざまな加工がなされて最終的にトイレットペーパーのように巻き取られます。美濃さんの研究は、こうした過程において生じるさまざまな不具合を改善するためのシミュレーションの精度を向上させ、不良品の発生といった製品の無駄をより軽減させようとするもので、シミュレーションと実現象が一致するようロールの内部応力を計算するプログラムの精度を高めています。工学部3年次生からこの研究に携わる美濃さんは、今年3月16日にオンラインで開催された日本機械学会関東支部の「関東学生会第62回学生員卒業研究発表講演会」でもベスト・プレゼンテーション賞を受賞しました。「続けて評価をいただき、この研究への関心の高さを感じて意欲を新たにしています。今回検証した技術は高性能の素材をウェブ状にして商品の小型化につなげるといった幅広い分野で活用できます。これまでの研究で培った“ものごとに対する考え方”をこれから社会で生かしていきたい」と語っています。