大学院体育学研究科が「2021年度第3回健康・スポーツ科学セミナー」を開催しました

大学院体育学研究科では2月2日に、「2021年度第3回健康・スポーツ科学セミナー」をオンラインで開催しました。このセミナーは、学内外から健康やスポーツ科学の専門家を招き大学院生や教職員に知識の幅を広げてもらおうと、年に3回開催しているもの。新型コロナウイルス感染症の拡大により、WEBビデオ会議システム「Zoom」を用いて実施しています。今回は、日本電信電話株式会社コミュニケーション(NTT)科学基礎研究所主任研究員の木村聡貴氏を講師に迎え、大学院生や教員ら約60名が参加しました。

初めに本研究科の萩裕美子研究科長があいさつし、「近年はスポーツ庁もICTの活用に力を入れており、現場ではさまざまな専門家がスポーツの分析に携わっています。今後、スポーツの世界を担っていく大学院生の皆さんも取り組むべき分野だと思いますので、今回の講演からしっかり学んでください」と呼びかけました。

木村氏は、「ICTでスポーツ脳力を高める」と題して講演しました。人間の脳には一人ひとり個性があるため、「平均値を前提とせず、個々の潜在能力を最大限発揮させる方法論の開発に取り組んでいます」と説明し、主な研究内容を紹介。昨年夏に開かれた東京五輪で金メダルを獲得したソフトボール日本代表チームや、プロ野球選手へのサポートを例に、打者が球の速さや球種を予測するまでのプロセスを分析する技術、独自に開発したVR機器などを用いた打撃練習などを映像とともに解説しました。また、視覚や聴覚、脳波、心拍といった生体情報から脳の情報処理の仕組みを分析・フィードバックするなど、スポーツ脳科学の研究・技術を応用したサポートも紹介。講演後は参加者からの質問に実例を交えて回答し、「ICTを用いて人工的な環境をつくれば、実環境では再現が難しいプレーを練習に組み込むことも可能です。ビデオ分析のように情報をそのまま見るだけでなく、情報をうまく操作することでさらなる学習が期待できます」と語りました。

参加した藤木悠さん(大学院体育学研究科1年次生)は、「今回はソフトボールと野球に関する研究紹介でしたが、脳のメカニズムに基づく分析技術は、ほかの競技や芸術、医療にも応用できると思います。『スポーツ脳科学』という学問領域は、人間の能力、技術、多様性を深く理解するために役立っていくと感じました」と話しました。