スポーツ医科学研究所と文明研究所が中心となって12月10日に湘南キャンパスで、「スポーツ科学UNIT研究会」を開催しました。本学では幅広い分野の共同研究を促進して大学全体の研究力底上げを図ることなどを目的に、2015年に「研究の峰形成『研究交流会』」を開催。そこで生まれた「スポーツ科学UNIT」では、分野を問わずさまざまな視点からスポーツ科学について議論を深める場を設けてきました。今回は文明研も加わって文理横断的な研究会として初めて企画し、学生や教職員ら約40名が参加しました。






初めに文明研の田中彰吾所長が、「両研究所では学際的な内容に熱心に取り組んでおり、人文社会系のプロジェクトなど共通する部分も多くあります。私自身もスポ医研の山田洋所長とは15年以上前から運動学習について議論してきました。本研究会も活発な意見交換の場になることを期待しています」と研究会開催の経緯や趣旨を語りました。続いて教員や学生ら8名が研究内容を発表しました。理学療法士として脳卒中患者のリハビリテーションにも従事している文明研の三枝信吾特定研究員は、患者の主観的経験の変化を時系列で分析し歩行回復における身体性と物語性の関係について発表しました。スポ医研の五十嵐健太研究員は、スマートフォン使用中の転倒経験が歩行パターンに与える影響を実験的に検証した成果を解説。理学部数学科の山本義郎教授はハンドボールの統計的分析について発表し、宮城島晃大さん(大学院体育学研究科博士後期課程1年次生)はスポーツ観戦時の脳波測定の結果から会場の一体感と満足度の相関性などを説明しました。






また、ベンチャー企業の経営者でもある岸陽さん(同)は股関節トレーニング機器「HiTREX」の開発について紹介。体育学部生涯スポーツ学科の田巻以津香准教授はリズムに関する哲学的考察を解説するとともに、知的障がい者とのダンス活動についても発表しました。同じく生涯スポーツ学科の谷木龍男准教授は性的マイノリティとスポーツに関する研究を紹介し、曾根田憲吾さん(工学部機械工学科4年次生)は極低温の冷却刺激を利用して身体の自然治癒力や回復力を高める「クライオセラピー」の効果測定について解説。各発表後には聴講者から多くの質問や感想が寄せられました。発表を聞いた体育学部長で大学院体育学研究科長の内山秀一教授は、「社会課題と関わる研究が多く、今日の発表や議論が今後の研究を深めることにつながると期待しています」と講評。スポ医研の山田所長は、「教員だけでなく大学院生や学部生の発表もあり、さまざまな要素がつまった研究会になりました。各研究所が力を合わせることで幅が広がり、深みが増します。今後も本学のよさを生かしてよりよい研究ができる場をつくっていきたい」とまとめました。