品川キャンパスで1月16日に、アフガニスタンで医療・人道支援に尽力した故・中村哲医師のドキュメンタリー映画『荒野に希望の灯をともす』上映会と、同作の監督・谷津賢二氏らを迎えたパネルディスカッションを開催しました。このイベントは、グローバルシチズンカレッジ(国際・経営・観光・情報通信・政治経済の5学部)が本学の教育・研究の成果を広く社会に還元する取り組みの一環として、学生や地域の皆さまが国際協力や人道支援、平和についてあらためて考える機会を設けようと開いたもので、約100名が参加しました。

上映に先立ち、政治経済学部の若野綾子准教授がイベントの趣旨を説明。藤本祐司学長補佐(グローバルシチズンカレッジプロボスト、観光学部教授)が登壇し、「何時間もかけて水を汲みに行くために学校教育を受けられないアフガニスタンの子どもたちが、病や貧困から脱け出せずに紛争に身を投じざるをえない現実に対して、中村医師がたった一人で情熱を傾けて立ち向かい、やがて社会を大きく変えていったありようをぜひ映画から実感してください。上映後のディスカッションも併せて、将来を担う学生の皆さんが世界について考える貴重な機会になることでしょう」とあいさつしました。
続いて映画を上映。数多の困難を乗り越えて65万人もの命を支えるインフラになっていく用水路を建設した中村医師の生きざまを20年以上にわたって追った谷津監督の作品に、参加者から大きな拍手が送られました。パネルディスカッションでは、政治経済学部の藤巻裕之教授が司会を務め、谷津監督と共に元・駐日アフガニスタン大使館広報官で山梨県立大学准教授のジェイソン・プラット氏も登壇。「没後6年・中村哲医師が今問いかけるもの」をテーマに、アフガニスタンをはじめとした国際情勢や社会の課題について意見を交わしました。



谷津監督は、アフガニスタン紛争の渦中で1000時間以上に及んだ困難な撮影の様子と、その過程で垣間見たモーツァルトと漫画『クレヨンしんちゃん』をこよなく愛した中村医師の人となりを紹介。中村医師が折々に残した言葉の中でも特に好きだったという天台宗開祖・最澄の言葉「一隅を照らす」について、「中村医師は、『一人ひとりが自分の良心に従い、自分がいる場所を少しでも明るくできるように生きれば社会は変わる』とおっしゃっていました。皆さんもまずは、自分が置かれた場所で自分ができることを一生懸命やってみてください」と話しました。プラット氏は、自身が携わるアフガニスタンの平和構築を目指すボランティア団体「一般社団法人バハル山梨」の活動を紹介。「アフガニスタンの研究をはじめ、人々の人権や経済問題を改善して平和で安心・安全な生活が送れることを目指し、特産品のドライフルーツやナッツ、ハチミツ、ラピスラズリという石のオリジナルアクセサリーなどを輸入・販売する活動も展開しています。ぜひ皆さんもアフガニスタンに関心を持ってください」と呼びかけました。

パネルディスカッションの後半では、質疑応答の時間が設けられました。聴講した学生や参加者からは、「中村医師を突き動かした原動力は何か」「中村医師が命を落とした背景とその後の現地の変化」「土木の専門家ではないにもかかわらず、中村医師が自分たちで用水路建設しようと決断した思いとは?」「アフガニスタンにあって日本にはないものは何か」など多様な質問が寄せられ、谷津監督とプラット氏が丁寧に答え、参加者と対話を深めました。最後に、藤巻教授が映画上映会に寄せられたシャイダ・モハメド・アブダニ駐日アフガニスタン大使のメッセージを紹介。大使が最大限の敬愛と親しみを込めて「カカ・ムラド(ナカムラのおじさん)」と呼びかけ、中村医師への思いを綴った長文のメッセージを代読しました。