
総合農学研究所の荒木朋洋教授が6月14日に、熊本市現代美術館で開催された地震10年シンポジウム「熊本地震からの復旧・復興と地域ミュージアムの役割―市民の声と共に進めてきたこの10年、そしてこれから―」に登壇しました。熊本地震から10年の節目に県内のミュージアムで働く関係者が体験を振り返り、未来のミュージアムの在り方を考える機会にしようと同美術館が企画したものです。本学の旧阿蘇キャンパスも大きな被害を受け、一部は「熊本地震震災ミュージアム『KIOKU』」となっていることから、当時農学部長を務めていた荒木教授がパネリストを務めました。
当日は市民ら約40名が参加し、熊本市現代美術館主幹兼主査で学芸員の冨沢治子氏が司会を務め、荒木教授のほか、熊本市動植物園長の松本充史氏、熊本県立美術館学芸普及課長の林田龍太氏、熊本県文化課主任学芸員(熊本市から派遣)の竹原明理氏、震災ミュージアム統括マネージャーの久保尭之氏、文化財保存修復学会副理事長(災害担当)で国立民族学博物館教授の日髙真吾氏(文学部1993年度卒)、熊本市現代美術館主席審議員兼文化的処方推進室長の岩崎千夏氏が10年の経験や思いを語りました。荒木教授は、「本震直後の旧阿蘇キャンパスは孤立して通信手段もほぼない状況でしたが、本震翌日には湘南キャンパスからトラックで支援物資が届けられ、明かりもともり、とても助かった記憶があります。神戸大学に在籍中に指導教員だった先生が阪神・淡路大震災のときに農学部長をされていて、そのときの教訓を聞いていたことも非常に役立ちました」と語りました。パネリストたちからは、震災という非常事態の中でミュージアムが果たす心の避難場所としての役割や、被災家屋から歴史的資料を救出して散逸や廃棄を防ぐ「文化財レスキュー」の仕事などが語られ、震災の記憶や教訓をどのように記録し、次世代へ継承していくか、対話の場としてミュージアムが果たす役割についても議論しました。
市民から寄せられた「地震を乗り越えて伝えたいこと、地震で感じた大切にしたいこと」という質問には、それぞれの経験を踏まえ、災害時の人とのつながりや地域コミュニティの重要性、未来への備えについて意見が交わされました。荒木教授は地震直後にキャンパス近くのアパートに住んでいた学生たちが地域住民らと協力して救助活動や避難所運営に当たった様子を説明し、「大災害のときはまず自助、共助、そして公助と言われます。学生たちはアパートに誰が居て、誰が居ないのかといった情報を紙に書いて貼り出し、大家さんやレスキューとも協力している姿を見て、地域のコミュニケーションや人と人とのつながりの大切さを感じました。地震は突然やってきます。体験や教訓、正しい情報を聞いて、備えていかないといけない」とまとめました。

