品川キャンパスで6月30日に、平和戦略国際研究所の上月豊久所長(国際学部教授)による特別セミナー「プーチンの歴史認識とウクライナ戦争」(主催:平和戦略国際研究所、共催:国際学部国際学科、政治経済学部政治学科)を開催しました。上月所長は外務省入省後、欧州局長、官房長を経て2015年から23年までロシアに特命全権大使として駐在。国際政治、外交論が専門で、2024年度から本学に着任しました。セミナーには両学科の学生と教員ら約120名が参加しました。

上月所長は、1997年の在ロシア大使館一等書記官着任以来、通算で17年におよびロシアに在任し、日ロ平和条約交渉にも携わりました。今回の特別セミナーは、著書『プーチンの歴史認識─隠された意図を読み解く─』(新潮社、2026年2月刊)の刊行を記念して開催したものです。セミナーの冒頭で上月所長は、「ロシアの歴史を学ぶと共に、プーチン大統領がそれをどのよう解釈しているのか紹介し、分かりにくいプーチン像の分析を試みています」と同書の位置づけについて言及。自身が外交官として間近に見てきたプーチン大統領について、経済への関心や宗教観、人への接し方や支持率の動向に神経を尖らせる側面といった人物像、難解とされる論文を紐解くなかで伺い知れる統治手法や歴史観に関する分析について話しました。
また、ウクライナ戦争の経緯と現状について、地図で示しながらロシア国境に迫るNATO拡大を可視化し、ロシア側の視点から脅威ととれる現状を解説。プーチン大統領が、2014年のクリミア併合時から民族の一体性を強調し、21年に発表した論文で「ロシア・ウクライナ・ベラルーシの歴史的一体性」を主張していたことを紹介し、「プーチンは緻密にウクライナ侵攻の準備を進めてきました。彼にとって歴史は政治の道具でもあり、その認識を知ることはますます重要になっています」と話しました。また、政治体制の変革などをもたらしたクリミア・第一次世界大戦・アフガンといった3つの戦争の影響を解説し、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とのドイツの政治家・ビスマルクの言葉を引用。「ウクライナ戦争が始まった日、私はロシアから東京に打った電報の最後に、『プーチンのこの決定は、ロシアを孤立と衰退に導くのだろうか。ブレジネフによるアフガン侵攻の敗退が旧ソ連邦の崩壊を導いたことを思い出す』と打ちました。プーチンが歴史から何を学ぶのかは今後の課題。この戦争からの復興に大きな役割を期待されている日本は、ロシアに対する立ち位置をわきまえ、ロシアに対して人的・学術・文化といった各方面の交流を続けていくことが大切だと考えます」と締めくくりました。



参加者からは、「ウクライナのドローン攻撃により潮目が変わってきたとみられるロシア国内の政治力学変化の状況は?」「経済的な苦境を伝えられながらも、国内でプーチン人気が下がらない理由は?」「ウクライナに対する支援から日本は何をえるべきか」など多くの質問があり、上月所長が一つひとつ丁寧に解説しました。