建築学科の渡邉研司教授が台湾・東海大學のチャペル保存修復活動に協力しています

工学部建築学科の渡邉研司教授が、本学の協定校で台湾の台中市にある東海大學のキャンパス構内にあるチャペル「路思義教堂」(ルース・チャペル)の保存修復活動に協力しています。東海大學は1955年に創立されたミッション系の私立大学です。1963年に完成したチャペルは建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞受賞者である貝聿銘(イオミン・ペイ)の統括のもと、台湾を代表する建築家の一人である陳其寛(チェン・チークワン)が設計を担当。柱を1本も使わずにコンクリート製の壁で全体を支えるHPシェル構造と言われる独特の構造を持つことから、世界的にも高い評価を受けています。2014年にはアジアの建築物として唯一、近代建築の保存活動を支援しているアメリカのゲティ財団の資金援助制度「Keep It Modern」の認定を受け、保存修復に向けた活動が行われています。

渡邉教授は、今年1月に行われた第1回目のワークショップからアドバイザーとして参加しています。このときには、関係者や台中市長、専門家らを前に、日本で近代建築の保存に取り組んでいるDOCOMOMO Japanの活動や近代建築保存の意義などをレクチャー。愛媛県八幡浜市立日土小学校を事例に、建物を使い続けながら保存する方法を紹介し、チャペルのコンクリートや外壁に張られているタイルの劣化を防ぐ方法などをアドバイスしました。

また6月19日から21日の第2回ワークショップには、タイからの留学生で大学院総合理工学研究科博士課程2年のアビチャットボロパン・ワオビチャンさんとともに参加しました。渡邉教授は、千葉県の大多喜町役場や東京六本木にある国際文化会館の事例をもとに、既存の建物を生かしながら耐久性や耐震性を高める方法を解説。アビチャットボロパンさんは、自身が設立に関わったDOCOMOMO Thailandの設立の経緯や、タイにあるモンクット王ラカバン工科大学の農学部棟など建築家の坂倉準三が設計した同国内の建物群の保存活動を紹介しました。

渡邉教授は、「日本の近代化を支えた長崎県端島にある高島炭鉱や三池炭鉱などが『明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業』としてユネスコの世界遺産に登録されたことからもわかる通り、近年では19世紀から20世紀の近代建築を保存し、かつリノベーションや補強を行って公共施設などとして使っていく動きが世界的に高まっています。一方で、建設当時は最先端の技術やアイデアがふんだんに取り入れられた建物でありながら、文化的な価値を認められずに壊されてしまう建物が多いのも現状です。そうした中、台湾・東海大學は創立当初に作られた校舎やキャンパスの景観を上手く残しながら、その価値を高める努力していることに感銘を受けています。今後進められ具体的な保存活動でもコンサルタントとして積極的にかかわりながら、より良い保存修復に関する研究にも生かしていきたい」と話しています。

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