篠原准教授と学生が執筆の一部を担当した雑誌『月刊視覚障害―その研究と情報―』が発行されました

ティーチングクオリフィケーションセンターの篠原聰准教授と学芸員を目指して学んでいる武田李万さん(教養学部芸術学科2年次生)が一部の執筆を担当した雑誌『月刊視覚障害―その研究と情報―7月号』(社会福祉法人視覚障害者支援総合センター発行)が、7月1日に発行されました。同誌は1963年から視覚障がい者に関する研究論文や教育実践レポート、スポーツの話題やエッセイなどを発信する視覚障害分野の専門誌で、武田さんらは特別企画「名作の彩り」の一部を執筆。視覚障がい者にとっての鑑賞活動として知られる「対話型鑑賞」における解説だけでなく、語り手の抱く感動の共有を意図した「言葉で描く鑑賞」を目指す取り組みについて紹介しました。同企画を監修する筑波大学芸術系助教の宮坂慎司氏と篠原准教授が以前より交流があったことから、今回の執筆活動への参加へとつながりました。

武田さんは、日本画家である鏑木清方の美人画三部作の一つである『浜町河岸』の紹介を担当。原稿執筆にあたり、5月5日に東京国立近代美術館で開かれていた鏑木清方展を見学、後日、同展の担当者で主任研究員の鶴見香織氏への取材も実施。また、5月22日には鎌倉市・鏑木清方記念美術館を訪れ、同館学芸員の今西彩子氏から鏑木清方の画業について説明を受けました。その後は、オンラインで全盲の研究者である半田こづえ氏や宮坂氏、文字や図表などの情報を音声化する音訳ボランティアネットワークの担当者からもアドバイスを受け、絵の特徴や動きを伝えるとともに、作品から感じ取った感想を約3000字で表現しました。

武田さんは、「篠原先生から対話鑑賞に関する執筆の話をいただき、東海大学におけるユニバーサルミュージアムの取り組みや日本画に興味があったため参加を決めました。本来であれば、見ただけで分かる色や向きなどの当たり前の情報を言葉で表現するのはとても難しく、篠原先生による指導をはじめ多くの方にサポートしていただき、何度も内容の修正を重ねました。自分の書いた言葉や表現で対話型鑑賞を楽しんでもらえたらうれしいです」と語りました。自身も執筆に参加した篠原准教授は、「学芸員の仕事には作品や資料の解説活動があり、ディスクリプション(描写力)が必要となります。そのためのノウハウを学ぶとともに、視覚に障がいのある方に言葉で伝える難しさを感じてもらえたかと思います。また、作品や資料を目で見るという前提のもと作成されている博物館や美術館の解説は、ともすると抽象的な文章になりがちですが、今回の取り組みで『誰もが楽しめる博物館・美術館の解説活動のあり方』や『誰もが芸術を楽しむことができる環境づくり』をあらためて意識してもらえたのではないでしょうか。今後の武田さんの活躍に期待しています」と話しました。