東海大学マイクロ・ナノ啓発会(Tune)の第8回学術講演会を開催しました

東海大学マイクロ・ナノ啓発会(Tune)の第8回学術講演会を、2月25日に湘南キャンパスで開催しました。東海大学の医学・理学・工学などの各分野で展開されているマイクロ・ナノサイズ領域における研究内容の相互理解を深めることを目的に、各分野の若手研究者が中心となって開いている催しで、本学マイクロ・ナノ研究開発センターの母体となるなど共同研究の活性化にもつながっています。今回は、文理融合研究の創発に向けて相互理解を深めることをメーンテーマに設定し、学生や教職員ら約200名が参加しました。

基調講演では、文学部アジア文明学科の山花京子准教授と工学部応用化学科の秋山泰伸教授が古代エジプトの謎の解明を目指して進めている文理融合型の共同研究を紹介。山花准教授は、「文理融合型研究の推進に向けて―文系と理系の興味が出会うとき―」と題し、陶器とガラスの中間物質であり古代エジプトで広く使われていた「ファイアンス」をはじめ、製法や性質、用途が分かっていない遺物が数多く存在する一方、本学には国内有数の規模を誇るエジプトコレクションがあることを説明し、「理工系の先生方との共同研究をさらに活発に展開し、さまざまな物質の謎を解明していきたい。どんなささやかなことでも興味があればぜひ声をかけてほしい」と語りました。一方の秋山教授は、「理系の一研究者が体験した(体験中)の文理融合研究の面白さと課題」と題して講演。理系と文系では専門用語の違いなどから相互の議論の理解が難しいこともあるとしたうえで、「互いが相手の領域については素人なのだという発想を持てれば、連携は難しくない。”餅は餅屋”という言葉があるように、互いの専門を尊重し、生かしつつ必要な情報を分かち合えれば、理系と文系でも共同研究は可能です。異分野の研究者との交流は大変刺激的で、私自身の研究の幅も広がっている」と語りました。

続いて特別講演では、本学創造科学技術研究機構の田口かおり講師が、「洗浄論争とオリジナル症候群―近代保存修復学と光学調査の射程―」と題して講演。絵画の保存修復にX線写真が利用されている状況やその歴史を紹介。近年では、現在残っている実物を大切にしつつ、X線写真などの工学技術を使って得られた情報も共有するという考え方が一般的になっていると語りました。

ポスターセッションでは、理学部と工学部の学生、大学院生、博士研究者らが78件の研究成果を出展。教職員を交えながら、学生や研究者同士がそれぞれの専門分野について研究成果を発表しました。また講演会では、参加者の投票によってポスター賞も発表され、終了後の懇親会でマイクロ・ナノ研究開発センターの稲津敏行所長から賞状と記念品が手渡されました。

参加者からは、「さまざまなポスター展示を見て、より効果的な発表方法を学ぶよい機会になった」「見落としていたポイントを指摘され、アドバイスをもらうなど今後の研究に役立つ情報を得られました。学生同士が互いに学び合うよいイベントだったと思う」「絵画の修復にX線が使われていることを知り、自分が考えていた以上に幅広い分野で理工系の成果が生かされていることが分かった。就職して企業に入ってからは分析の仕事に携わるので、目の前にある分野だけでなく、他分野への応用についても考えるよう心がけたい」といった感想が聞かれました。

今回の世話人を務めた工学部機械工学科の木村啓志准教授は、「学生にとっては、アートや人文社会学でもサイエンスが生かされていることを知るよい機会になったと思う。理工系分野ではこれまでにもTuneをきっかけにした共同研究が進んでおり、今後は本学内でその輪がさらに広がっていくことを期待しています。また、Tuneが始まって丸4年になりますが、活動をより活性化させるためにも、もう一度そのあり方を考え直し、さらに工夫していきたい」と話しています。

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