課程資格教育センターが日本画を触る美術鑑賞イベントを開きました

課程資格教育センターでは9月30日に東京・銀座のステップスギャラリーで、「無視覚流アート論 vs Kinesis ~絵画を触楽する、制作者と鑑賞者の《気》の対話」を開きました。25日から30日まで開かれた日本画家・間島秀徳氏の展覧会「Jackknifing “Kinesis”」の関連イベントとして、同ギャラリーと共同で開催したものです。当日は、国立民族学博物館の広瀬浩二郎准教授と間島氏、本センターの篠原聰准教授が、美術評論家・塚崎美歩氏の司会で美術作品の触覚による鑑賞方法について語り合い、来場者がアイマスクをつけて手で触る絵画鑑賞に挑戦。日本画の愛好家や美術館・博物館の関係者ら約30名が参加し、学芸員の資格取得を目指す本学の学生ら約20名が運営をサポートしました。

はじめに、障害者文化に関する人類学的研究などを専門とし、自らも視覚に障害がある広瀬准教授が、手で触って作品を鑑賞する際のポイントや注意点について説明。「最初は、見ただけではわからない質感や機能、形状を楽しんでください。次の段階では作品が作られた背景や制作者の思いを追体験し、最終的には心のままに自由に感じてください」と語りました。広瀬准教授とアイマスクをした篠原准教授が間島氏の日本画に手で触れて感想を述べ合った後、参加者もアイマスクを付けて学生のマンツーマンのサポートを受けながら触覚による鑑賞を体験。終了後には学生が個別に感想を聞きとりました。

フリートークでは、広瀬准教授が間島氏を宮本武蔵に重ね、武蔵によって書かれた武芸・武術の極意書『五輪書』の「地、水、火、風、空」に則して「無視覚流鑑賞法」について解説。「作品と対話することは、自分自身と対話し、宇宙と対話すること。今日は、作品を通してより深く、より広い世界を知るための入口に立つことができました。伝えたい人と感じたい人がいれば、気が交流し、心地よい空間が生まれます。それが、年齢や障害に関係なく作品を楽しむ『ユニバーサルミュージアム』の原点だと思います」と語りました。間島氏は、「制作の出発点には、見えないものを見えるようにしたいという思いがあります。皆さんの感想を聞いて、想像力や感じる力の素晴らしさに感銘を受けました」とコメント。篠原准教授は、「手の平で作品に触れる心地よさを味わいました。視覚に頼りすぎると、好きなものだけしか見なくなったり、存在しないものまで見たりしてしまうように思います。体全体で感じること、心でみることを復権させたい」と語りました。

参加者からは、「絵に触れて作品を鑑賞するのは初めての体験。日本画の岩絵の具の質感を楽しむことも作品の味わい方だと知りました」「指先や手の平に神経を集中させることで、見るだけではわからない作品のディテールを感じることができたように思います」といった感想が聞かれました。運営をサポートした学生は、「絵に触れながら感じることは人によって千差万別で、大変興味深く思いました。作品のさまざまな味わい方や楽しみ方を提案できる学芸員を目指して学びを深めていきたい」と話していました。

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