デンマーク教育講演「世界一幸せな国をつくった独特の教育とは」を開催しました

湘南キャンパスの松前記念館(歴史と未来の博物館)では11月7日に、デンマーク教育講演「世界一幸せな国をつくった独特の教育とは~今日のデンマークにおけるグルントヴィとホイスコーレ~」を開催しました。学校法人東海大学の建学75周年記念事業の一環で企画したもので、学生や教職員約100名が参加しました。

講演会では最初に、同館事務室長の佐保吉一教授(文学部北欧学科)が、ホイスコーレ(国民高等学校)の概要とその提唱者であるニコライ・グルントヴィについて紹介しました。彼は留学先のイギリスで「自由主義」を経験する中で、教育における対話の重要性も認識し、ホイスコーレという教育機関を創案します。その考えを受けて、1844年にレディング・ホイスコーレが創設されました。また、デンマークから北欧諸国を経て、ホイスコーレは世界各国に広がり、日本には内村鑑三が主宰する聖書研究会の活動のなかでグルントヴィのホイスコーレが紹介されたのでした。

続いての講演では、当初はデンマークの教育思想家ヨーアン・カールセン氏が登壇する予定でしたが、諸般の事情により同氏が来日できなかったことから、講演翻訳原稿を翻訳家の田口繁夫氏が代読。学園の創立者・松前重義博士の著書『デンマークの文化を探る』を紐解きながら、ホイスコーレの理念と同国の歴史において果たしてきた役割を説明しました。そして、松前博士がデンマークを訪れた1934年はヨーロッパにおいても歴史的な転換点であり、同書からも著者の洞察力が読み取れるとしたうえで、「地に足を付け、現実と真摯に向き合う姿勢は、グルントヴィと松前博士で共通している。そしてこの考え方は、デンマーク人の典型的な価値観にも通じている」と語りました。その後、ホイスコーレの活動が基礎になり、協同組合運動やデンマークの福祉国家が誕生したと解説。「世界に官僚主義的な考え方が広まりつつある中、持続可能な社会を実現するためにはホイスコーレの果たす役割は重要になっている」と話しました。終了後には、デンマークにいるカールセン氏と国際電話をつなげ、質疑応答も行われました。

参加者からは、「日本の義務教育や大学とは違い、先生と学生が平等という価値観にもとづいて学ぶ場があることを知ってとても新鮮でした。カリキュラムや実践的な教育の中身についても知りたいと思いました」「ホイスコーレの理念を、松前博士の考え方や東海大学の建学の精神とリンクさせて学ぶ貴重な機会でした」といった感想が聞かれました。

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