「湘南ひらつか野外彫刻展のゆくえ 岐路に立つ彫刻」を開催しました

課程資格教育センターでは6月17日に平塚市美術館で、屋外彫刻の保存と活用に関する公開シンポジウム「湘南ひらつか野外彫刻展のゆくえ 岐路に立つ彫刻」を開催しました。湘南キャンパスがある西湘地域では、1980年代後半から90年代にかけて大規模な野外彫刻展が開催されるなど文化活動が盛んでしたが、近年は管理やメンテナンスが行き届いていない作品が多く、保存と活用方法が問題視されています。今回の催しは、大学と行政だけではなく、平塚市に設置されている野外彫刻の作者や市民を交えて、地域の文化資源である野外彫刻の保存と活用について議論することを目的に企画。平塚市職員、市民ら約60名が参加しました。

午前中に平塚市役所周辺の野外彫刻の見学ツアーを行い、午後のシンポジウムでは、はじめに本センターの朝倉徹所長が、「平塚市内には多くの野外彫刻があり、おそらく大勢の方がその野外彫刻に思い出をお持ちのことと思います。皆さんがその思い出を大切にするとともに、平塚市で育つお子さんたちにも思い出をつくってもらうために、話し合いができる場になればと思います」とあいさつ。続いて本センターの篠原聰准教授が、湘南キャンパス内に設置しているブロンズ像のメンテナンスワークショップなど、これまでの取り組みについて紹介し、「昨年7月には学内でのワークショップを秦野市と共催し、その後は市内の有志団体『彫刻愛し隊』の皆さんと一緒に秦野市内の彫刻をメンテナンスする計画を立てるなど輪を広げています。平塚市でもメンテナンス活動の可能性を広げたいと思いますので、今回は文化資源を守っていく第一歩として皆さんにご意見をいただければと思います」と呼びかけました。

第1部では、屋外彫刻調査保存研究会会長の藤嶋俊會氏、平塚市美術館学芸員の勝山滋氏、平塚市市民部文化・交流課課長の小菅正人氏、秦野市市民部専任参事の佐藤正男氏の4名が登壇。神奈川県における野外彫刻の歴史的背景や、93年に開催された「湘南ひらつか野外彫刻展」の当時の様子と、25年経った現在の作品の状態などが報告されました。また、本学と連携して野外彫刻のメンテナンスを実施している秦野市の取り組みについて紹介した佐藤氏は、市民参画による「彫刻のあるまちづくり」事業の概要を発表しました。第2部のパネルディスカッションでは、野外彫刻展に出展された野外彫刻の作者8名が登壇し、作品に込めた思いや、破損している部分の修繕についての要望が語られました。中でも、野外彫刻展で作品「REVOLVE」が大賞となった中村ミナト氏は、「作品は作者の分身であり、何年経っても気にかけています。移転や修繕など、折々に連絡していただきたい」と、市の職員に向けて訴えかけました。また、参加者を交えた総合討論では、屋外彫刻調査保存研究会の高嶋直人氏が、山口県宇部市で学芸員・市民・彫刻家が連携して実施している彫刻の展示・メンテナンスの事例を紹介。平塚市でも三者の連携によって作品の保存・活用を推進していこうと、登壇者や市民から活発に意見が交わされました。

野外彫刻シンポ (2)_525.jpg

野外彫刻シンポ (3)_525.jpg

野外彫刻シンポ (4)_525.jpg

野外彫刻シンポ_525.jpg