望星ゼミナール/平和研シンポジウム「5Gをめぐる米中覇権戦争と日本」を開催しました

高輪キャンパスで12月23日に、望星ゼミナール/平和研シンポジウム「5Gをめぐる米中覇権戦争と日本」(主催:望星学塾、情報通信学部、平和戦略国際研究所)を開催しました。第5世代移動通信システム「5G」は、携帯電話やスマートフォンなどの通信に用いられる次世代通信規格の一つで、中国の5Gにかかわる特許数が米国を抜くなど激しい国際競争が展開されています。5Gの国際基準を確立した国家が次の政治経済、安全保障、サイバー空間の覇権を握る可能性があると言われている中、本シンポジウムは、日本がどのような役割を担うか、どのような政策を選択することで国益の保持やサイバー空間の平和利用に貢献できるのかを探ろうと開催したものです。

当日は学生や教職員らが参加。まず、望星学塾の橋本敏明副塾長(学校法人東海大学常務理事)が本学の教育理念や望星ゼミナール開講の経緯について語り、「現代社会の流れを読み解き、日本、そして国際社会の平和につながるヒントを探していきましょう」とあいさつしました。続いて、平和研の藤巻裕之次長(政治経済学部准教授)が本会の趣旨を説明し、平和研が取り組んできた人間の安全保障研究とサイバー空間の融合を解説しました。そして、前・経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報審議官で、現在ファイアイ株式会社最高技術責任者(CTO)の伊東寛氏が基調講演を行いました。伊藤氏は、5Gの特徴である「超高速大容量」、「低遅延」、「同時多接続」についてそれぞれ具体例を挙げながら説明。「情報を送るコストを激減させたインターネットは世界を大きく変えましたが、送れる量に制限がありました。5Gはその制限を取り払うことができ、移動通信システムだけでなく、製造業をも飛躍的に進化させるでしょう」と語りました。さらに、5Gの課題として機材の高騰や基地局の新設といった点を挙げたほか、アメリカや中国、韓国を中心とした各国の5G関連特許の数を紹介。日本が開発に遅れをとっている現状や米中開発戦争についても語り、「日本は今後、政治的な面を重視して米国標準に乗るのか、経済性を重視して中国標準を利用するのか、とりあえず様子を見るのかのいずれかになると推察できます。どの方策を選ぶにしても、米中の狭間にいる日本は独自のビジョンを持つことが肝要です」と解説しました。

その後のパネルディスカッションでは藤巻次長の司会で伊藤氏、情報通信学部の濱本和彦学部長や情報理工学部の慎祥揆准教授、平和研の佐々木孝博客員教授(富士通システム統合研究所)が登壇。基調講演の内容をもとに、これからの日本に必要とされるサイバーセキュリティー人材や大学に求められる役割について議論しました。閉会のあいさつに立った濱本学部長は、本学が2022年4月に計画している全学的な改組改編に触れ、「これまで情報通信学部は『ソフトウェア』『組込み』『セキュリティ』『社会での実装、経営への活用』といった技術について、教育・研究活動を展開してきました。この度の改組改編では、これらの分野を学部内で分担してきた4学科体制から情報通信学科の1学科体制へと変更になります。今回のパネルディスカッションのテーマの一つでもあるサイバーセキュリティーについて、すべての学生が基礎学習として、学ぶことになります。社会が常に変化するのと同様に、学生の考え方も日々変わっていきます。私たち教職員もこれらの変化を常に意識しながら、教育・研究に臨んでいきます」と語りました。

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