阿蘇地域の新しい観光スタイルを提案する「手ぶらでキャンプ&サウナ体験 実証実験プロジェクト」を実施しました

経営学部観光ビジネス学科(文理融合学部地域社会学科)の小林寛子教授のゼミナールが8月5日から8日まで、2021年3月に開通した阿蘇のゲートウェイ「新阿蘇大橋」の下に広がる農地の一角で、「手ぶらでキャンプ&サウナ体験 実証実験プロジェクト」を実施しました。新型コロナの感染拡大に伴い、“三密”を避けた新しい観光スタイルとしてアウトドアでのアクティビティが注目される中、小林ゼミではコロナ後の新しい観光ニーズを調査する実証実験を企画。キャンプ好き、サウナ好き、アウトドア好きなど、さまざまな年齢層の市民らにモニターとして参加を依頼し、地域の活動団体「立野わかもん会」の皆さんや株式会社シェルパの協力を得て実施に至りました。

プロジェクトでは、豊かな自然や食材、良質な水に恵まれた南阿蘇をフィールドに、モニターにキャンプと、近年人気が高まっている“ととのう”サウナを体験してもらおうと準備を進めてきました。さらに、夕食のバーベキューや朝食にはすべて阿蘇産の食材を使用。サウナやキャンプファイヤーで使う薪も阿蘇産、サウナの後の水風呂も阿蘇の豊潤な天然水を活用するなど、阿蘇ならではの地域資源とアクティビティのマッチングで新たな価値創造を図る狙いです。

期間中は、1泊2日のプランに3組計11名のモニターが参加。各日程ともに、まずはゼミ生でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持ち、今回の企画を中心になって立案した重金優希さん(4年次生)の運営で、参加者がテント型のサウナを体験。重金さんによるサウナの楽しみ方の説明をはじめ、熱したサウナ石にアロマを含んだ水をかけ、発生した高温の蒸気をタオルで仰ぎ、心地よい香りと熱風で一気に発汗を促すサウナパフォーマンスであるロウリュも行われる中、参加者は85度まで高められた温度で汗を流すとともに水風呂と休憩も含めた3セットに臨みました。また、終了後には重金さんがブレンドしたサウナ好きに人気のドリンク「オロポ」もふるまいました。一方、学生たちの案内でシェルパから貸し出されたテントを設営するなど、キャンプの準備も着々と進めました。

夕食後のキャンプファイヤーでは、参加者と学生たちが火を囲みながら自由に意見を交換。観光プログラムとしての改善点や学生スタッフの動き方、阿蘇地域の観光資源活用など幅広くアイデアを語り合いました。参加した小林ゼミ出身で大手旅行会社に勤務する内野友稀さんは、「私たちの年代は在学中に熊本地震に見舞われたこともあり、阿蘇地域では震災復興スタディーツアーなどを展開してきましたが、コロナ禍でさまざまな行動が制限される中でも後輩たちが活動を続けてくれていることに心強く感じました。今後も視野を広く持ち、学びの中で次のステップを目指して頑張ってほしい」とエールを送っていました。重金さんは、「初めての試みかつ悪天候で初日のスケジュールが大幅に変更になるなど想定外の事態もありましたが、サウナの魅力と阿蘇の水にこだわった内容を提供する中で、モニターの皆さんから貴重なフィードバックを得ることができました。寄せていただいた声から感じたのは、さまざまなサービスはプロの仕事だからこそ満足していただけるということ。これからもこのような活動がビジネスとして成立するか、可能性を探っていきたい」と語りました。

指導する小林教授は、「熊本地震の発生から6年を経てもなお、阿蘇地域の復興に向けて多様な観光資源を連動させることで滞在時間を増やせるような具体的な動きは乏しく、さらにコロナ禍に見舞われたため、この地域の観光業界もこの状況を乗り切るのが精いっぱいというのが現実です。しかし、このような時代だからこそできるビジネスモデルの提案を続けることが大切です。今回の実証実験で得られた知見を生かしながら、今後の観光プログラムの開発に役立てていきたいと考えています。学生たちにとっても、実践の場で今までにない観光スタイルの提供や阿蘇ブランドの確立などについて学ぶ貴重な機会となりました」と話しています。