海洋学部の李准教授がコーディネーターを務める「漁する女子ジャパン」プログラムが開催されました

海洋学部水産学科の李銀姫准教授がコーディネーターを務める「漁する女子ジャパン」プログラムが8月20日に、静岡県東伊豆町の稲取漁港で開催されました。昨年10月にスタートした「漁する女子ジャパン」は、カナダ・ニューファンドランド地域で実施されている「漁する女子カナダ」の姉妹プログラムで、女性の漁業への認識・参画を高めることを目指しています。具体的には、海に出て漁をする部分のみではなく、多くの女性が活躍している陸上作業部分にも注目することで、ジェンダー問題解決や地域活性化につなげることを狙いとしています。本プログラムは用宗漁港を基本的な舞台に、日本の小規模漁業・沿岸漁業の研究ネットワーク「TBTI Japan」や本学海洋学部、清水漁業協同組合用宗支所、静岡県水産・海洋局などの関連機関が連携し、月1回程度、国内各地の現役漁業者や海外の漁業関係者らによるオンラインや対面での講話や体験乗船などを実施しています。今回は李准教授と共同コーディネーターを務める水産学科の平塚聖一教授、海洋学部生が運営に協力し、市民ら約20名が参加しました。

はじめに東伊豆町の岩井茂樹町長があいさつし、「東伊豆は山と海が比較的近く、素晴らしい風景が広がっています。今日はさまざまなプログラムが用意されていますので、ぜひ稲取の一次産業である水産業を楽しんでください」と語りかけました。続いて伊豆漁業協同組合稲取支所運営委員長の鈴木精氏が、稲取漁港で行われてきたマグロ漁や天草漁の歴史を語り、商標登録もされている「稲取キンメ」の獲り方や特徴、高い鮮度の理由、イルカ等による食害について解説しました。その後は、キンメダイ漁船を使ったクルージングを提供する「稲荷丸」の内山綾子氏が、漁業以外の仕事と両立を図ってきた自身の経験や、イセエビの刺網漁に携わる女性の話、漁協婦人部の活動、クルージングを提供するまでの苦労などを語りました。稲取漁港で獲れた海産物のバーベキューを楽しんだ後、2班に分かれて稲荷丸クルーズを体験。キンメダイやイセエビ漁に従事する岩瀬清敏氏から、網や仕掛けおよび漁船についての説明も受けました。「伊豆稲取キンメマラソン」実行委員長の西塚良恵氏は、大会の立ち上げや運営の苦労を振り返り、「育った町に少しでも恩返しができればと考えて取り組んできました。情熱を持ってあきらめなければどんなことでもできる」とメッセージを送りました。最後に、「稲取漁港直売所 こらっしぇ」店長の森田健司氏の案内で店内を見学しました。

参加者は、「これまで下田に向かうときに通り過ぎる場所だったのですが、今回あらためてアットホームで温かい稲取の魅力を知ることができました。さまざまな切り口から漁に関する企画を提供してもらい、とても勉強になりました」と感想を述べました。村岡未夢さん(海洋学部4年次生)は、「漁業に興味があり、用宗での企画にも参加してきたので、他の地域も見てみたいと思い参加しました。漁船クルーズやキンメマラソンの取り組みが印象的でした」と話しました。李准教授は、「漁業は海に出て魚を獲る男性の仕事というイメージが強いのですが、女性の仕事場にもなれます。一方、漁船が帰港した後の陸上では多くの女性が活躍していますが、必ずしも十分に“見えて”いるわけではありません。彼女たちの仕事にスポットライトを当てることでジェンダーへの意識が高まり、女性たちの声もさまざまな政策に反映されると考えています。今は私たち研究者側が主導していますが、ゆくゆくは漁業者サイドが中心となって地域活性化の一環として多くの漁港で開催してほしい」と期待を語りました。