教育開発研究センター(文明研究所)の馬場弘臣教授らが中心となって活動している「緒形拳研究会」が、10月8日に湘南校舎で「第1回緒形拳アーカイブ・カフェ」を開催しました。馬場教授らは2001年から03年まで劇作家・北條秀司の蔵書を整理した縁で緒形さんとつながりができ、緒形さんが亡くなった後、ご遺族から資料整理の依頼を受けました。その後、同研究会を設立し、「史料管理学演習」の授業を履修する学生も加わって蔵書と出演作品、台本やパンフレット、新聞や雑誌のスクラップ、デビュー当時からの写真などを年代別にまとめて目録を制作してきました。20年に横浜市歴史博物館で企画展「俳優緒形拳とその時代―戦後大衆文化史の軌跡―」を開催し、21年からは本研究所の「近現代芸能文化史に関する研究」として活動を継続。今回は、緒形さんの出演作品の台本や写真、緒形さん宛の手紙の目録がまとまってきたことを受け、ファンや地域住民にも資料整理を体験してもらおうと企画し、7名が参加しました。
初めに緒形幹太さんが父・拳さんの資料整理を委託するまでの経緯を説明し、馬場教授が「緒形拳と戦後大衆文化―俳優アーカイブの可能性―」と題して講義しました。緒形さんの足跡や馬場教授らのこれまでの活動を振り返るとともに、「緒形さんの資料群はその俳優人生に関する研究だけでなく、緒形さんを通した芸能文化史の研究、さらには彼が生きた時代そのものの研究を進める手段となります」と解説。「台本には本人の書き込みがたくさん入っています。資料整理を体験しながらぜひ楽しんでください」と語りかけました。その後は学生たちのサポートのもと、台本、写真、手紙の3つの部屋に分かれて作業を開始。目録と資料を突き合せてファイルにシールを貼り、台本や写真に資料番号を書いていきました。参加者たちは、「テレビで見ていた作品の台本に多くの書き込みがあり、あのシーンでこんなことを考えていたんだと感じることができました。あらためて作品を見返そうと思いました」「資料の多さに驚きました。子どもたちの世代にも残してほしいすてきな作品ばかりなので、ぜひ多くの人に伝えていってほしい」と期待を語りました。
馬場教授は、「カフェのような雰囲気の中で科学を語り合う『サイエンスカフェ』のようなイベントを文系の研究でもできないかと考えたことが開催のきかっけです。キャッチフレーズは『見て、触って、学ぼう』。実際に体験することで、アーカイブとして残していくことへの理解を深めてもらえれば」と狙いを語ります。学生たちは、「リアルタイムで作品を見ていたわけではないので、参加者の皆さんから多くのことを教えてもらいました」「皆さんが笑顔で話しかけてくれて、作品についてさまざまな話ができて楽しかった。資料整理の面白さも感じてくれたと思います」と口々に話していました。
なお、11月5日(土)には第2回緒形拳アーカイブ・カフェを開催する予定です。