西川教授の研究グループがプランクトンの一種から新規の光反射構造を発見しました

海洋学部の西川淳教授らの研究グループが、プランクトンの一種「ハダカゾウクラゲ」から新規の光反射構造を発見。研究成果が10月28日付で、オープンアクセスの国際学術誌『PeerJ』に掲載されました。西川教授は2020年度から独立行政法人日本学術振興会の科学研究費助成事業の助成を受けて、琉球大学理学部教授の広瀬裕一氏、北見工業大学情報デザイン・コミュニケーション工学コース准教授の酒井大輔氏、産業技術総合研究所主任研究員の垣内田洋氏とともに、体が柔らかいプランクトンの体表構造と光学特性について研究してきました。本研究はその過程で見つかったもので、透明な浮遊性の巻貝の仲間がこれまで知られていなかった構造により、海中で姿を見えづらくしていることについて明らかにしたものです。

ハダカゾウクラゲはクラゲの仲間ではなく、巻貝の仲間のプランクトンです。外敵の攻撃から身を守る貝殻を持っておらず、体のほとんどの部分が透明で海中では目立ちません。一方で、貝殻で覆われていない「内臓核」は透明ではなく、赤褐色の髄質が銀色の皮質に包まれています。研究グループでは、この銀色に光る内蔵核の構造を分析するために透過型電子顕微鏡などによる観察とモデルによる光反射シミュレーションを行いました。その結果、内蔵核の皮質は屈折率の高い薄層が屈折率の低い薄層を挟んで積み重なり、そこを通る光が反射・干渉した結果、銀色に輝くことが分かりました。これは「ブラッグ構造」と呼ばれ、一部の魚やイカの体でも確認されていますが、今回ハダカゾウクラゲで見つかった構造は細胞そのものが層となり多細胞性のブラッグ構造を構成しており、このような仕組みはこれまで知られていなかったものです。

西川教授は、「地球表面のおよそ7割は海面に覆われており、海中には数えきれないほどの生物がいます。海洋生物における食物連鎖を支えるプランクトンには、さまざまな種がおり、それぞれが生き抜くために独自の進化を遂げています。一方、私たち人間はほとんどのプランクトンについて、それらがどのように適応して生きているかを把握できていません。顕微鏡でしか見られない小さな生き物も多いですが、美しく、不思議な形をしているものばかりで、それらの体の仕組みには我々の生活をより豊かにするヒントが詰まっています。これからも海や生物の謎を解き明かしながら、その魅力を社会に発信していきたいです」と語っています。

なお、今回の論文は下記リンクから閲覧できます。
<論文情報> DOI 10.7717/peerj.14284

                      銀色に光る内蔵核。この銀色に光る仕組みが新しく見つかった構造によるもの。