今川教授が「JRA畜産振興事業に関する調査研究発表会」で講演しました

総合農学研究所の今川和彦教授が11月17日に、東京・AP新橋を拠点にオンラインでも開催された「令和4年度JRA畜産振興事業に関する調査研究発表」で講演しました。公益財団法人全国競馬・畜産振興会によるこの催しは、畜産に関する調査研究成果を畜産関係者らに共有し、その研究や技術を現場で役立てることを目的に開催されているものです。

今川教授は「アミノ酸プロファイルによる不受胎牛の判別:利点と欠点〜不受胎牛の早期判別による分娩間隔の短縮〜」をテーマに講演。ウシの受胎率が年々低下の一途をたどっている現状を伝えるとともに、「分娩間隔の改善に向けて空胎日数の短縮が重要な鍵になる」と説明し、「空胎日数が短くなると分娩間隔の短縮になるため、畜産農家の経営基盤の強化に繋がります。また、妊娠には性周期や排卵、受精、初期胚の発達が絶対条件ですが、妊娠を成立させるには着床と胎盤形成が必須です。着床を制御できれば妊娠を制御することができます」と語りました。続いて、不受胎牛の早期判別法の開発に向けた子宮内因子群と血清因子を特定する研究調査の結果について報告。
受胎・不受胎牛の血液中のタンパク質と代謝産物を網羅的に解析し、不受胎牛でのみ変化が見られる因子の同定を行ったところ、20種類以上のタンパク質候補因子が抽出された研究結果を紹介。しかし、その後に試みた、特定のタンパク質を抽出するウエスタンブロット解析ではこれらの因子が検出されなかったことから血中タンパク質因子での判別は困難であると説明しました。一方で、同時に行ったアミノ酸化解析で変化が見られたことから、「血液中のアミノ酸プロファイルの調査によってアミノ酸バランスの変動から早期に不受胎牛を判別することが可能だと判明しています。血中アミノ酸による不受胎牛の判別事業の数値データやデータ回収した結果、血液サンプルは、未経産牛の初回妊娠時の受胎・不受胎牛発見にとてもよいツールですが、未経産牛はウシ全体の20%ほどしかおらず、約80%を占める経産牛では陽性率が低く擬陽性率が高いため実用には至りません。陽性率を90%以上まで高めるとともに擬陽性率を5%未満に減らすには、アミノ酸やタンパク因子だけで考えるのではなく、それらを組み合わせた複合マーカーで検証する必要があり、今後の研究を進めていく」とまとめました。