公開講演会「本のある居心地の良い空間を演出する―ブックカフェに求められる役割―」を開催しました

ティーチングクオリフィケーションセンターでは、11月26日にオンラインで公開講演会「本のある居心地の良い空間を演出する―ブックカフェに求められる役割―」を開催しました。神奈川県秦野市の珈琲店「珈琲11月の雨」のオーナーで、駒沢女子大学非常勤講師も務める高橋怜奈氏を講師に招き、本とのかかわりが多様化する中、ブックカフェがどのような役割や体験を提供しており、そのためにどのような工夫がされているのかお話いただきました。当日は、司書課程で学ぶ学生たちや教職員、一般参加も含め約50名が参加しました。

はじめに、高橋氏が自身の経歴やオーナーを務める珈琲店のコンセプトを紹介するとともに、ブックカフェ空間の活用方法について、「SNSなどの発展によって人間関係が表面的になったことから、自分の空間を求める人が増加しています。ブックカフェもただ読書をするだけでなく、義務や必要性に縛られないセカンドプレイス、サードプレイスとしてのニーズが高まってきました。ラウンジなど仕事ができる空間もあるため、人それぞれの用途に合った滞在が可能となっています」と話しました。さらに、ブックカフェの3つの業態「新刊書店」「古本」「閲覧のみ」について解説するとともに、「お客さんはブックカフェに居心地のよい空間だけでなく、『本と向き合いながらどんな特別な体験ができるのか』を楽しみに来ています。そのため、ただ本とカフェがあればいいのではなく、プラスαとしての何かを掛け合わせた場所を提供しなければいけません。また、ブックカフェは1人あたりの滞在時間が長く回転率があまりよくないので、そこにどのような工夫を凝らすかも重要なポイントです」と説明しました。

続いて、空間の居心地を構成する「場所」「身体性」「関係性」「時間性」「安心感」の5つの要素について人間工学の観点から解説するとともに、コンセプト型ブックカフェの事例として、日本近代文学館内のブックカフェ「BUNDAN」と入場料がかかる本屋「文喫」、6つのエリアで構成される店内が特徴の「本と珈琲 梟書茶房」や周辺環境、サービスなどについて紹介するとともに、空間構成について解説。最後には、ブックカフェの魅力や未来について語り、「新たなジャンルや文化への興味の入り口につながるさまざまな仕組みには、エンタメ性があります。今後は、さらに個性的な読書体験ができる施設が増えていくだけでなく、技術の発展によって接客の無人化が進むのではないでしょうか」とまとめました。

最後には質疑応答の時間も設けられ、「居心地は人それぞれとのことですが、より多くの人に居心地のよさを感じてもらう方法は?」「経営する珈琲屋のサードプレイスとしての役割は?」など、学生から多くの質問が寄せられました。